CRETから、最新の教育・テストに関する学会レポートをお届けします。
日本教育工学会(JSET)SIG13(STEM教育)主催 第3回研究会報告
2020年2月9日に、大分県立美術館(OPAM) 2F 研修室で開催された日本教育工学会(JSET)SIG13(STEM教育)主催 第3回研究会に参加しました。この研究会の冒頭では、SIG13の代表である早稲田大学の森田裕介先生から、本研究会の趣旨説明がなされた後、4つの講演が行われました。これらの内容について報告いたします。
第一に、「STEMキャンプの実践事例と評価の構築- CPSとしてのSTEMとAを統合していくということ」のタイトルで、順天堂大学の齊藤智樹先生のご講演がありました。米国からSTEM教育が広がった背景として、「社会的諸問題を解くことのできる人材育成」があることや、社会のニーズに合わせた問題(Issues)を取り上げる重要性について述べられました。また、A(Arts)を統合していくことについて、棚沢泰氏の「工学と技術の本質」(1981)を例示しながら、工業技術と広義の意味の工学にArtsがかかわることを説明した後、子ども達が達成したい音楽活動について、つや、音圧、周波数の知識を活用しながら学習が営まれる実践例をご紹介いただきました。
第二に、「初等教育におけるArt & Designを基盤としたSTEAMコンテンツ開発のための基礎研究」のタイトルで、明治学院大学の手塚千尋先生、杉山雅俊先生、江草遼平先生、辻宏子先生、東京家政大学大学院の畑山未央先生のご講演がありました。STEAMのAは視覚芸術ではなく、エンジニアリングとデザインを重視した「メイカー」プロジェクトである(Clapp & Jimene, 2015)というお話がなされました。また、デザイン思考とアート思考の違いについての説明がなされました。両者の思考が異なる点を理解しながら、Artsの位置づけを考えていく重要性が述べられました。
第三に、「文科系大学におけるSTEAM教育のためのカリキュラム開発」のタイトルで、明治学院大学の江草遼平先生、杉山雅俊先生、辻宏子先生、手塚千尋先生のご講演がありました。Mの位置づけとして、リンク機構を教材としたパンタグラフの事例について紹介がなされました。図形とリンク機構を考えながら身近な道具でものづくりを行う体験が、数学の図形に関する概念を活かす活動として有効であることが述べられました。
最後に、「STEAMの視座と認識の科学~国立大学法人における教養教育プログラムの挑戦(序章)~」のタイトルで、大分大学の竹中真希子先生、中原久志先生、鈴木雄清先生のご講演がありました。大学生を対象にピタゴラスイッチを作成させることと、物理の概念との関係について、報告がなされました。ピタゴラスイッチを作成する実践で、学生が物理の概念を活用する支援として、設計図に数値を記述させたり、決まった時間にボールがゴールに到達するようなデザインを考えさせたりするなど、活発な議論がかわされました。
本研究会を通じて、STEAM教育の背景や、S, T, E, A, Mのそれぞれの位置づけについて明確になりました。この場をお借りして、ご講演いただいた先生方に厚く御礼申し上げます。
(CRET連携研究員 北澤 武)