CRETの学会レポート Colomn

CRETから、最新の教育・テストに関する学会レポートをお届けします。

大学教育学会第33回大会 参加レポート
~大学におけるインストラクショナルデザイン~

  2011年6月4~5日に桜美林大学で開催された大学教育学会第33回大会に参加しました。私は本学会は初めてですが、学会員ではなく話題提供者として参加しました。

  5日(日)の午前のラウンドテーブルで話題提供し、午後は自由研究発表がありました。ラウンドテーブルのテーマは、「大学におけるカリキュラムの設計と実施(カリキュラムマネージメント)―大学人の協働可能性―」。司会者は立教大学の佐々木一也、話題提供者は、名城大学の池田輝政、愛媛大学の秦敬治、白鴎大学/CRETの赤堀侃司の3名でした。この報告では、主に私の発表した、「大学におけるインストラクショナルデザイン」について、概要を報告します。

  インストラクショナル・デザイン(以下ID)とはもともと第2次世界大戦時の軍事訓練から発したもので、勝利を目的・目標として科学的知見を動員した訓練プログラムでした。プラグマティックな発想をベースとして、名人芸による教育から科学的教育への転換を目指します。そこでは教育目標はニーズに置き換えられ、ニーズに応ずるための過程が組まれます。過程は明示的に示すので、これらは理工系的な積み上げ過程の明確な分野をモデルにしています。

  それに対し、教育学のような分野ではこの過程明示は馴染まなかったりもします。そこから白鴎大学教育学部ならではの苦労も出てきます。IDでは、明確な課題とその達成のプロセスに対し、明確な学習理論を対応させて具体的な教育課程を組み立てていきます。白鴎大学では「状況的学習論」的に行われています。白鴎らしい教師(真面目に教育に取り組む教師)を育てる教育課程を作るために、委員会に職員を加えています。経営的視点を持った職員が加わらなければ、実効性ある教育を生み出すカリキュラムやその運営ができません。その一方で、学生の進路に関し、学生は職員より教員を頼りにする傾向にあります。職員部局の進路指導にもっと教員が関わった方がよいと言えます。いずれにしても、実際には白鴎大学ではPDCAサイクルを繰り返していくことで、次々に新しいニーズに対応しつつ、カリキュラムを変えていっています。カリキュラムは学問ベースでなくニーズ(学生の将来像)をベースにします。

  本発表では、カリキュラムにまつわるデザイン・プロセスに関する教職協働のあり方について、発表しました。フロアからいくつかの質疑があり、全体的にラウンドテーブルは活発で、内容は発表者ともに好評でした。

(CRET理事 赤堀 侃司)

赤堀 侃司 -Kanji Akahori-

ICT CONNECT 21(みらいの学び共創会議)会長/東京工業大学名誉教授

静岡県高等学校教員、東京学芸大学講師・助教授、東京工業大学助教授・教授、白鴎大学教育学部長・教授を経て、現在に至る。この間、放送大学、国連大学高等研究所などの客員教授の兼務。

◆著書:『教育工学への招待』(ジャストシステム 2002年)、『授業の基礎としてのインストラクショナルデザイン』(日本視聴覚教育協会 2004年)、『授業デザインの方法と実際』(高陵社書店 2009年)、『コミュニケーション力が育つ情報モラルの授業』(ジャストシステム、2010年)、『タブレットは、紙に勝てるのか』(ジャムハウス 2014年)など。

学会レポート

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CRETの研究領域

テストの評価や解析についての研究を行う。海外の教育テスト研究機関との協同研究や交換プログラムなども実施。







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コミュニケーション能力、チームワーク能力、ソーシャルスキルなどを測定するテスト方法の研究開発を行う。







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