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第4回東アジア子ども学交流プログラムレポート

  チャイルド・リサーチ・ネット、お茶の水女子大学グローバルCOEプログラム「格差センシティブな人間発達科学の創成」 主催、お茶の水女子大学で行われた「第4回東アジア子ども学交流プログラム」についてご報告します。これはチャイルド・リサーチ・ネット(CRN)によって2007年より始まったプログラムで、育児・保育・教育に関係する東アジアの大学、教授の相互交換講義を支援し、子ども学の普及と国際化を目指した学術交流活動です。(これまでの活動報告はこちら を参照してください。)


  第4回プログラムでは「言葉の発達と脳科学~東アジアでの研究と実践~」というテーマで、脳科学の最新の研究成果をふまえて、“ことば”というキーワードで日中韓の研究と実践について、3ヶ国の専門家による講演とシンポジウムが行われました。その中でも、基調講演とシンポジウムに焦点をあててご紹介します。

  株式会社日立製作所役員待遇フェローの小泉英明先生による基調講演では、「外国語としての第2言語習得と脳科学」と題して、言語習得と臨界期に関係する話や、進化的観点から、ヒトが相対音感を獲得したこと(その他の動物には絶対音感はあるが、相対音感はない)の言語習得における重要性などの話がありました。また、日本の力を広く海外で生かすためには、リンガフランカ(lingua franca:意思伝達の手段となる共通語) としての英語能力も必要だが、読み書きから入る日本の英語教育に対する疑問を呈し、脳科学の観点を加えて言語教育の新たな最適メソッドを見つける可能性について述べられました。

  シンポジウムでは、「幼児のリテラシー習得に及ぼす社会文化的要因の影響~日・中・韓比較~」というテーマで、日本・お茶の水女子大学、中国・華東師範大学、韓国・梨花女子大学とベネッセ次世代育成研究所による共同調査の発表がありました。具体的な調査内容は、3~5歳の幼児に個別の対面調査、子どもたちの読み・書き、語彙 、アルファベット読みの習得度調査、文字の道具的価値への気づきなどについて、対象児の保護者および在籍している保育所・幼稚園の保育者に対してアンケート調査を実施しました。
  発表では調査の概要や結果についての報告、政策提言などがありました。リテラシー能力と保育形態、しつけの仕方との関係、また男女差や加齢による変化など、3カ国の間で類似点と相違点が明らかになり、歴史や文化的背景の違いを感じる内容でした。今回は調査結果の報告が主で、調査手法の詳述はありませんでしたが、アセスメントの観点から以下2つの点について考えました。1つ目は、幼児を対象にするアセスメントでは、文章提示等の成人向けのアセスメント手法をそのまま使用するのが難しいため、絵の使用、アニメーションの使用など、工夫が必要である点です。2つ目は、国際調査では、バックトランスレーションなどの翻訳の精度を高める方法はあるものの、翻訳バイアスの可能性が否定しきれない点です。この点においては、絵やアニメーションを使ったアセスメントであれば逆に回避できる可能性がある問題ともいえます。幼児を対象にした国際調査という点では、その調査手法ついても学ぶべき、また検討すべき点が多くあるのではないかと思いました。
  その他当日の講演要旨については、こちら をご覧ください。

  第5回東アジア子ども学交流プログラム は2009年11月2日(月)、3日(火)に上海(中国)で「情動の子ども学」をテーマに開催されました。

 

(CRET協力研究員 横井 理絵)

その他研究員 -Other Researcher-

学会レポート

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