CRETの学会レポート Colomn

CRETから、最新の教育・テストに関する学会レポートをお届けします。

日本テスト学会第7回大会参加レポート

  日本テスト学会 は2003年5月に設立された比較的新しい学会です。人の能力を測定・評価するテストに焦点をあて、評価技術の向上のみならず、テストを受け入れる社会への働きかけも行い、科学的根拠と教育的理念の双方に基づいたテストの開発と普及を目指しています。
 今年の第7回大会ではテーマとして「社会に貢献するテストの科学」を掲げ、テストやテスト科学者が担うべき役割が増していることを印象付ける大会となりました。

 議論や報告が行われていた内容について概観すると、評価技術の向上の側面からは、IRT研究の深化、自己組織化マップ(SOM)による推定を用いたニューラルテスト理論(NTT)、異なるテスト間の関係性を検証するリンキング技術、一部の受検者集団に対して問題項目の特徴が変質してしまう特異項目機能(DIF)のほか、CBTによる解答時間に関する分析や誤答分析の可能性なども報告されており、これからのテスト開発や評価における基礎理論・技術が集まっていたかと思います。特に、リンキングやDIFは諸外国に比べ国内ではあまり注目されてこなかったトピックであり、今後の国内での認知の広がりに期待したいところです。

 テスト実施の側面からは、CBTやデータベース、およびテスト作成支援に関する報告がありました。日本では、一度利用したテスト項目はそれ以降のテスト項目として再利用しない――いわゆる「項目の使い捨て」――が一般的に行われていますが、受検者による解答を分析することによって、出題したテスト項目に難易度や弁別性などといった属性情報を付加することができ、このようなテスト項目を目的に応じて再構成することで効率的なテスト実施が可能になることから、テスト項目の再利用はテスト実施者や作成者側が抱える問題作成の労力を軽減するだけではなく、テスト受検者にとっても短時間で適切な診断が受けられるため負担の軽減につながります。そのためには、出題項目の管理や解答情報から得られた情報を整理し格納する技術のほか、項目情報をもとにしたテスト作成技術、そしてこれらの処理を(半)自動的に行うCBTの技術が必要となり、まさしく大会で発表された報告が今後ますます重要になってくるでしょう。

 以上のほか、注目されるトピックとしては、Can-do-statements(Cds)の活用が挙げられます。Cdsとは元来、測定された能力を数値ではなく具体的な行動を用いて示した短文のことであり、たとえば「新聞の社説を読んで分かる」といったように、特徴的なある行動ができる(orできない)ことを用いてテスト結果を解釈するために考案されたものです。CdsのほかにもCan-do-tableなどといった名称が付けられているときもあります(2009年8月の行動計量学会レポート参照)。 このCdsを自己評定基準として用いた外国語能力の測定、特に海外留学生のプレースメントテストに利用した例が報告されました。

 来年の第8回大会は、多摩大学経営情報学部において2010年8月30日~31日の日程で行われる予定です。 

 

(CRET研究員 阿部 大輔)



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