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韓国・小学校のデジタル教科書事情 見学報告
2010年11月1日に、韓国・ソウル近郊の港町、仁川(インチョン)にあるDongmak小学校を訪問しました。この小学校は英才教育を推進する一方で、野球も強い文武両道の校風で、2007年から、一部の希望する児童に対して、実験的にデジタル教科書を導入した授業を実施しています。 ここでは、小学5年生の授業の様子と校長先生の話を中心にレポートします。
小学校5年生の授業では、男女半々、合計30名のクラスの理科の取り組みの様子を視察しました。デジタル教科書は通常の教科書をスキャンした程度の仕組みでしたが、アニメーションや写真の拡大表示機能がついており、児童は問題なく使いこなしていました。教師は、児童が読んでいるデジタル教科書のページを教室前のパネルに見せるなど、児童がさぼりにくくする工夫をしていました。
授業後の校長先生の話によると、教科書導入には、東ヨーロッパでのデジタル教科書導入の取り組みを参考にしたとのことでした。 この小学校が、なぜ東ヨーロッパを参考にしたのか、またどの国を参考にしたのかについては説明がなかったため、今回の視察では確認できませんでした。注目したいポイントだと思います。
デジタル教科書を導入して3年間、国語・科学・社会・英語・数学・音楽の6教科で試行した結果、児童の評判が高いのは科学と社会とのことでした。学年、教科によらず、使い慣れるのに半年かかることがわかってきました。児童は、文字はキーボード、絵はデジタルペンという具合に、認識精度や書きやすさから、入力ツールを使い分ける傾向があります。通常の紙の教科書より集中度は高くなるようだが、疲労するので、1日の利用時間は3時間程度が限度なのではないか、との意見でした。
韓国では、現在、KERIS という半公共の団体がデジタル教科書を推進しています。今後、国としても、希望する小学校への導入を随時進め、全国的に広めていく方針です。
デジタル教科書の長所と短所を考慮して、初期のうちは従来の紙の教科書とデジタル教科書とのハイブリッドで授業を行い、教育効果の高そうなところから、徐々にデジタル化を進めていく、というのが現実的なのではないか、と感じました。