CRETから、最新の教育・テストに関する海外の動向をお届けします。
海外アセスメント動向レポート -CBTについて-
2010年6月25日~7月2日、アメリカのテスト開発機関 ETS (Educational Testing Service)と教育テクノロジーの展示学会 ISTE (International Society for Technology in Education) を訪問しました。コンピューターを使ったアセスメント (CBT, Computer Based Testing) 2点について報告します。
ISTEの「オープンソースを使ったオンラインアセスメントへの動き(Moving Online Assessment Forward Using an Open Source Technology Platform)」というセッションで、ETSの研究者がCBAL(Cognitively Based Assessment of, for, and as Learning) について紹介していました。これは、幼稚園から高校の教育の質保証をするためのアセスメントとして、より多面的な教育の評価を目的としたものです。学習の達成度評価(assessment of learning)、指導方法の評価(assessment for learning)、それ自体が意味のある学習体験となる評価(assessment as learning)の3側面を実現しようとするものです。CBALでは、授業でのタスクや活動内容、参照資料、診断テストがコンピューター上で提供されます。7年生(中学1年生)の数学問題事例 を見ると、体型の比を考えながらマンガのキャラクターを描いたり、青と赤のペンキを配合して紫色を作る作業を画面上で操作しながら考えたり、という活動ベースのタスクになっています。CBALの読解・作文・数学の総括的評価の予備調査は、2010年から、7,8年生対象に17の州の学校で実施中、形成的評価は3年前からPortland Public Schools(メイン州)でテスト中とのことです。今後、各州の標準テストに代わるものになるのでしょうか。予備調査の結果に注目したいと思います。
2011年の全米学力調査NAEP(National Assessment of Educational Progress)の作文で、初めてCBTが導入される旨、ETSの研究者が話していました。ワードプロセッサーで書くだけでなく、CBTならではの動画や音声も使われるそうです。WRITING FRAMEWORK for the 2011 National Assessment of Educational Progress(Pre-Publication Edition) によると、1)説明する、2)説得する、3)経験を伝える、の3つの領域に分かれています。それぞれ採点基準があり、6段階評価です。同資料巻末付録Bに問題事例がありますので、ご関心のある方はご覧ください。
紙と鉛筆に、パソコンという道具が加わり、テスト形態にも変化が見られます。日本のテストが今後どうなっていくのか、このような先行事例の長所と短所を見ながら、子どもたちの学びやすい道具で学習できる環境が整うといいと思います。
(注) アメリカでは、1969年から全米学力調査NAEP(National Assessment of Educational Progress)が始まり、4,8,12年生が任意抽出形式で調査に参加します。個人ではなく、集団の傾向を見ることを目的とします。教科は数学、読解、科学、作文(writing)、芸術、市民性、経済、地理、アメリカ史ですが、毎年、全学年が全教科受験するわけではありません。NAEPのスケジュール からわかるとおり、基本的に、隔年で、奇数の年に数学・読解・科学、偶数の年にその他の教科が1~3科目ずつ実施されています。