PISA2012とPIAAC2011、およびコンピュータベーステスト(Computer-Based Test、以下CBT)についてご報告します。
(1)PISA2012とPIAAC2011
OECDでは、2000年から3年ごとに、義務教育終了段階の15~16歳を対象にPISA(Programme for International Student Assessment) を実施しています。次回のPISA2012では、通常どおり、読解力、科学的リテラシー、数学的リテラシーを問う問題が出題され、数学的リテラシーがメインとなります。またオプションとして、これら3つのリテラシーと問題解決能力のCBTの実施が予定されています。 一方、2011年には16歳から65歳を対象とした大人のリテラシー調査PIAAC(Programme for the International Assessment of Adult Competencies) が実施される予定です。これはIALS(International Adult Literacy Survey,1994-1998) 、ALL(Adult Literacy and Life Skills Survey,2002-2006) を前身とする調査で、読解リテラシー、ニューメラシー(Numeracy)、問題解決の3つの領域の能力が測定されます。訪問調査の形で実施され、CBTとPBT(Paper Based Test)の両方が用意されます。被検者のコンピューター操作能力に応じて、調査員が適切なテストを提供します。
PIAAC2011の約6割はIALSやALLと類似の問題になるそうです。公開されているALLの問題例を見ると、ガソリンメーターの数値の読み方など日常や職場で使われるごく基本的なリテラシーを見る問題になっています。2010年3月から4月にかけて実施予定のPIAACの予備調査には、日本を含み28か国が参加する予定です。過去の調査で、例えば基礎的な読解や作文を書くスキルがあっても、現実場面で使いこなせない大人がいることが確認されているそうです。2011年の本調査ではどのような結果になるでしょうか。
2つのテストの結果報告は2013年の予定です。データ分析の視点としては、16歳集団のPISA2012とPIAAC2011の比較、PISA2000を受検した28歳集団のPIAAC2011の結果とPISA2000の結果の比較なども計画されています。
(2)CBTについて
CBTを開発するときにはいくつかの留意点があります。そのうち2つを紹介します。
1つは、9月のレポートに書きましたように、被検者のコンピュータへの親和性がスコアに影響してしまう点です。PISAとPIAACのCBTでは、PBTにおける鉛筆のように、コンピューターを道具として自由に使いこなせることを前提としたテストにする、という話でした。 2つめは、CBTで文章が長くなるとスクロール操作をする必要が出てしまうなど、受検者の負荷が上がってしまう点です。スクロール操作を減らす工夫として、CRETでは文章ではなくアニメーションや映像で問題を提示できるかどうか実験しています。10月に学会発表した、数学の問題を文章ではなくアニメーションで提示する実験研究(“Use of Animation to Display Math Problems on Computer-Based Test”>)を紹介したところ、訪問各所でその可能性について関心が寄せられました。
以上のように、問題解決などの教科横断の能力を、コンピューターを自由に操って解決できるかどうかという、まさに現代社会で求められている能力測定の実現に向けて、国際テストの準備が整えられている現状がわかりました。CRETでは、これらの世界動向をふまえて、日本人にとって必要な教育のあり方について、考えていきたいと思います。
(CRET研究員 星 千枝)
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