CRETから、最新の教育・テストに関する研究発表論文をお届けします。
2010年度統計関連学会連合大会発表報告
~21世紀の職業人に要求される新しいジェネリックスキル-その評価と育成~
2008年~2009年、CRETはベネッセコーポレーションとの共同研究で、大学生対象の統計・数理処理テストの予備調査を行い、トレーニング教材を開発しました。このたび、その成果を2010年度統計関連学会連合大会、「横断型人材育成」というテーマの企画セッション にて発表いたしました。会場には120名程度の研究者や教育関係者が集まりました。本稿では、統計・数理処理力における大学生の弱点とトレーニング教材の構成を中心に、発表内容について報告します。
21世紀に求められる能力として、課題に応じて解決する力が重要視されています。私たちは、数値データを根拠として客観的にものごとを解決する力を定義し、大学生を対象にアセスメントを開発しました。それは、コンテクストベースのテストで、ニュージーランドのセンサスアットスクールの問題解決のプロセスPPDAC サイクルを参考に、課題、計画、分析、結論という4つの問題解決のプロセスを問うような問題構成としました。大学生200名を被験者として予備調査を行った結果、特に成績中下位層の大学生の弱みとして、対前期売上高伸び率のような言葉を正しく数式に表せない、問題文で説明された記号の意味が理解できていない、計算で出た数値は正しいのにその解釈を誤ってしまう、などの結果が得られました。要約すれば、言葉と数値を対応づける力が弱いということになります。
そこで、これらの弱みを加味したトレーニング教材を開発しました。テストの枠組み同様、問題解決のプロセスにそって、課題把握・状況整理、「位置確認+3視点」で分析、判断という3つのプロセスを、学生になじみやすい状況場面で考えさせる構成になっています。80名程度の学生にモニター調査したところ、データ分析・統計の学びの重要性を感じた、就職活動に役立つ、これまで無意識にしていたことの意味を意識できた、などの声が寄せられました。特に、最後の声に関して、大学講義の中で問題解決のプロセスは暗示的に教えているという先生は多いのですが、意識的・明示的に講義することの意義が示唆されていると思います。