CRETから、最新の教育・テストに関する研究発表論文をお届けします。
日本教育工学会 第35回全国大会 発表報告
「自己の映像を利用した英語プレゼンテーション改善-ビデオ撮影の有無、および撮影者の反応の有無の比較-」
Using self video to improve a presentation in English–Comparing ways of recording video and ways of reaction of a cameraperson–
2019年9月に名古屋国際会議場で開催された日本教育工学会第35回全国大会に参加し、『自己の映像を利用した英語プレゼンテーション改善-ビデオ撮影の有無、および撮影者の反応の有無の比較-』と題して発表を行いました。
学校、ビジネスなど、さまざまな場面でプレゼンテーションを実施する機会があります。より良いプレゼンテーションをするために、プレゼンテーションの様子をビデオ撮影して視聴するという方法が考えられます。撮影した映像を視聴する際に期待される効果にモデリング(Bandura、1969)があります。モデリングとは社会的学習理論の一部であり、他人の様子を見ることで学習することができるという理論のことです。メディアの発達につれ、映像を通じてもモデリングが可能となりました。他人だけでなく自分自身をモデリングする自己モデリング(Dowrick、1983)も可能です。
これまで、プレゼンテーションの映像を撮影、視聴することが効果的であるとの前提に立って研究を行って参りましたが、実際はどうなのか検証するために、映像を撮影することと映像を撮影しないことを比較する実験を行いました。
また、今回の研究ではプレゼンテーションを撮影する方法に焦点を置きました。プレゼンテーションとは、誰かに何かを伝えようとするものであり、聴衆を意識する行為であると考えます。前回の研究では撮影者の存在の利点が示唆されました。そこで、撮影者が存在するだけでなく、撮影しながらうなずくことが効果があると仮定し、撮影者がうなずくことと全く反応しないことを比較する実験を行いました。
大学生30名(男女各15名)が「ビデオ撮影あり」、「ビデオ撮影なし」、「撮影者のうなずきあり」、「撮影者が無反応」の4種類を行う被験者内実験を行いました。全員に英語でプレゼンテーションを行ってもらい、その様子をスマートフォンで撮影したグループにはビデオをペアで視聴してもらいました。ビデオ撮影は練習と本番の2回行い、映像視聴後はプレゼンテーションを19項目について各自自己評価し、感じたことを自由に記述してもらいました。今回の発表では、自己評価の結果の一部のみを扱いました。
ビデオ撮影あり群とビデオ撮影なし群を比較したところ、練習のプレゼンテーションでは有意差がある項目はありませんでした。一方、本番のプレゼンテーションでは、5%水準で「間が適切だった。」という項目で有意差があった。10%水準では「内容が適切だった。」、「アイコンタクトを取ることができた。」、「トーンが適切だった。(低すぎない声だったかどうか)」という項目で有意差がありました。
ビデオ撮影なし群は全項目において4つの群の中で最も高い平均値を示しましたが、ビデオ撮影なし群だけは自己の映像を視聴しておらず、自分のプレゼンテーションを客観的に見ていないことから、自己評価が高くなったのではないかと思われます。
撮影者がうなずく群と撮影者が無反応の群を比較したところ、練習、本番のプレゼンテーション共に有意差がある項目はありませんでした。
ビデオを撮影する際、撮影者はいた方が良いが、撮影中のリアクションは問題にはならないことが分かりました。
今後の課題として、ビデオを視聴する際に自己評価を高くする方法を考えること、実験デザインを見直すこと、練習と本番のプレゼンテーションの伸びを比較する、今回の実験で得た他のデータとの相関を検討するなど結果を再度見直すことが挙げられます。
最後に、本大会では多くの先生方から研究だけでなく、実践に関してもアドバイスをいただきました。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。
(CRET連携研究員 小林 輝美)
2016-10-08
湯 立
2016-09-30
相川 充
赤堀 侃司
柳沢 昌義
加藤 由樹
周村 諭里
加藤 尚吾
竹内 俊彦
舘 秀典
稲垣(藤井) 勉
澤海 崇文
北澤 武
若山 昇
宇宿 公紀
安西 弥生
外山 美樹
湯 立
長峯 聖人
三和 秀平