CRETの研究発表論文 Dissertation

CRETから、最新の教育・テストに関する研究発表論文をお届けします。

International Congress of Psychological Sciences (ICPS) 2019 発表報告
Is prevention focus poor for performance?: The role of the accessibility of superordinate goal.(防止焦点はパフォーマンスが低いのか?――上位目標の利用可能性の役割――)
Do promotion-focused people regard their rivals as important?: Relationships between regulatory focus and rivalry.(促進焦点の個人はライバルを重要とみなすのか?――制御焦点とライバル関係との関連――)

フランスのパリにて、2019年3月7日から9日にかけて開催されたInternational Congress of Psychological Sciences(ICPS)2019に、外山研究員と長峯の2名が参加し、発表を行ってきました。
エッフェル塔や凱旋門といった名所で有名なパリは世界一観光客の多い都市として知られていますが、我々がこの学会に参加した時期も例外ではなく、各所に様々な国から来訪したと思われる多くの観光客の姿が見られました。また、日本人観光客も多く、そのせいか、街の各所に日本語が書かれていたり、日本語を理解できる現地の方がいたりしました。そのため、海外ではあったものの、どこか安心できるような雰囲気を感じることができました。パリは最近デモが頻繁に行われているということで渡欧前は少し不安が大きかったのですが、いざ着いてみると想像していたような治安の悪さは微塵も感じられず、美しく自由なパリの姿を堪能することができました。
 
さて、学会はパリの17区にあるパリ国際会議場(Palais des Congres de Paris)で行われました。この場所は凱旋門から徒歩10分ほどの場所にあり、パリの中心部からほど近いところに位置しています。また、この学会はAssociation of Psychological Science(APS)という著名な学会が開催する国際学会であり、そのためか、日本人研究者も含む多くの方々が参加していました。今回、外山研究員と私は偶然にも同じ日程、同じ時間帯の発表であり、8日(金)の午前中にともに発表を行いました。外山研究員は「防止焦点はパフォーマンスが低いのか?――上位目標の利用可能性の役割――」という内容で、長峯は「促進焦点の個人はライバルを重要とみなすのか?――制御焦点とライバル関係との関連――」という内容で発表を行いました。
 
これまで一貫して主張してきたように、我々外山班は「制御焦点」という目標追求の個人差に着目し、特定の個人差を持つ子どもに対してどのように働きかけを行ったり、環境を整えたりすることが学業に対するモチベーションや学業成績の向上につながるのかを明らかにすることを目的とした研究を行っています。今回のICPS2019での外山研究員および長峯の研究は、それぞれ防止焦点、促進焦点に着目し、異なる観点からどのような要因がパフォーマンスやモチベーションに影響を与えるのかを検討したものでした。外山研究員の発表では、上位目標(より抽象的で長期的な目標)が活性化した場合、下位目標(より具体的で短期的な目標; ここでは1つ目の課題)が達成できた場合には促進焦点、防止焦点ともに連続する(2つ目の)課題のパフォーマンスが高かったものの、下位目標が達成できなかった場合には、促進焦点は連続する課題のパフォーマンスが低くなったものの、防止焦点ではそのような傾向がみられなかったことが明らかになりました。このことは、上位目標が活性化している場合、防止焦点の個人は下位目標が失敗してもパフォーマンス(あるいは意欲)の低下につながりにくいことを示しています。また、長峯の発表では、促進焦点の個人はライバルがいることによってモチベーションが高まりやすく、その結果としてパフォーマンスも高くなるということが示されました。また、あまり効果は大きくありませんでしたが、促進焦点の個人は防止焦点の個人よりもライバルを持ちやすいという傾向もみられました。これらの結果は、促進焦点の個人に対してはライバルを持つよう推奨することでより良いモチベーションやパフォーマンスにつながるという可能性を示しています。
 
ポスター発表時には、実に多くの方々に来ていただき、様々な観点から有益な助言をいただくことができました。日本の研究者の方はもちろんですが、欧米の研究者の方も興味を持ってポスターを見に来てくださいました。また、他の研究発表においても「制御焦点」を扱った研究がいくつか散見され、改めて「制御焦点」の学術的意義および注目度の高さを知るともに、それらの研究内容に触れることで見識を深めることができました。国際学会に参加する一番のメリットは、このように日本にいるだけでは知ることのできない研究に触れたり、国際的な研究者と関わったりすることができることなのではないかと改めて感じました。
 
パリは気温や天気の移り変わりが激しく、長いフライトや時差もあって少し疲労感は残りましたが、非常に良い経験となりました。今回得られた新たな知見を踏まえて、来年度以降も社会的実装を見据えたより良い研究を行っていきたいと考えています。
 
 
Toyama、 M.、 Nagamine、 M.、 Tang、 L.、 Xiao、 Y.、 Miwa、 S.、 & Aikawa、 A. (2019). Is prevention focus poor for performance?: The role of the accessibility of superordinate goal. International Congress of Psychological Science 2019. (poster presentation. Paris、 France、 March 8)

Nagamine、 M.、 Toyama、 M.、 Miwa、 S.、 Tang、 L.、 Xiao、 Y.、 & Aikawa、 A. (2019). Do promotion-focused people regard their rivals as important?: Relationships between regulatory focus and rivalry. International Congress of Psychological Science 2019. (poster presentation. Paris、 France、 March 8)
 
(CRET連携研究員 長峯 聖人)

長峯 聖人 -Masato Nagamine-

CRET連携研究員 / 東海学園大学心理学部心理学科 助教

趣味:散歩(天気が良い日)、ボードゲーム(主にドイツ製)

研究テーマ:対人関係、感情的動機づけ

研究発表論文

2018-07-19

教育テスト研究センター年報 第3号 2018年7月

赤堀 侃司

加藤 由樹

加藤 尚吾

竹内 俊彦

稲垣(藤井) 勉

澤海 崇文

北澤 武

若山 昇

宇宿 公紀

安西 弥生

外山 美樹

小林 輝美

湯 立

三和 秀平

小田 理代

Reasearch label
2018-03-02

19thAnnual Meeting of the Society for Personality and Social Psychology 発表報告

外山 美樹

湯 立

長峯 聖人

三和 秀平

CRETの研究領域

テストの評価や解析についての研究を行う。海外の教育テスト研究機関との協同研究や交換プログラムなども実施。







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コミュニケーション能力、チームワーク能力、ソーシャルスキルなどを測定するテスト方法の研究開発を行う。







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コンピューターベースのテストの基盤研究や、メディアと認知に関わる基礎研究、およびそれらの知見を活かした応用研究および実践研究を行う。







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