CRETから、最新の教育・テストに関する研究発表論文をお届けします。
E-Learn2009発表報告
~数学の問題をアニメーションで出題するCBTの研究開発報告~
CRETテスト基盤研究の一環として、アニメーションのみで数学の問題を出題する新しいCBTの開発と評価を行いました。この研究結果を10月下旬にカナダ・バンクーバーで開催された国際学会、E-Learn(World Conference on E-Learning in Corporate, Government, Healthcare, and Higher Education 2009) においてShort Paperとして発表しました。
この研究は、複雑な数学の文章題を出題した場合、その試験結果が問題文を理解するための読解力に依存してしまう可能性があることから、本来の数学能力を測定する方法はないだろうか、という問題設定からスタートしました。具体的には4つの数学の問題(立体図形、速さ、鶴亀算、図形の軌跡)を,それぞれアニメーション版と文章版で作成し、20人の大学生被験者に対して小規模な実験を行いました。今回の実験では各数学の問題の正解率を測定するのではなく、問題の内容自体をどれだけ早く正確に把握できたかについて測定しています。
実験の結果、アンケート評価ではアニメーション版の方が簡単そうだという印象面で有意な差はあったものの、問題の理解度のルーブリック評価や、理解までにかかった時間ではアニメーションと文章どちらの場合であっても、有意な差は見られませんでした。学会ではこれらの実験結果から、文章の代わりにアニメーションをつかって数学の文章題が出題できる可能性を示唆した、という結論を報告しました。
また、発表会場で3名から質問やコメントが挙がりました。実験や分析方法の詳細を確認する質問のほか、発達障害を持つ子どもに対する問題の提示方法としても有効だというコメントや、アニメーションによるアイテムバンクを充実させるためのアドバイス、他の理数教科への応用も可能ではないか、といったポジティブな意見が得られました。
この実験は、出題した問題や被験者特性に依存した可能性も考えられますので、今後も検証を続ける予定です 。