CRETから、最新の教育・テストに関する研究発表論文をお届けします。
19thAnnual Meeting of the Society for Personality and Social Psychology 発表報告
~Is prevention focus good for performance?: The role of regulatory closure~(防止焦点はパフォーマンスが高いのか?-制御完了の役割に着目して―)
~Can regulatory fit improve elementary school students’ performance and motivation?~(制御適合が小学生のパフォーマンスと動機づけを高めるのか)
~Effects of regulatory focus on the evaluation of messages: Focus the familiarity as moderators~(制御焦点がメッセージの評価に与える影響-熟知性を調整変数として-)
~The effects of product constraints on performance in a divergent thinking task: Regulatory focus as a moderator~(拡散的思考課題における産出物のカテゴリー制約がパフォーマンスに及ぼす影響-制御焦点を調整変数として-)
アメリカのジョージア州、アトランタにて、2018年3月1日から3日にかけて開催されたthe 19th Annual Meeting of the Society for Personality and Social Psychologyに、外山研究員、三和研究員、長峯研究員、そして湯の4名が参加し、発表を行ってきました。
学会の会場は、アトランタのダウンタウンにあるピーチツリー・センター(Peachtree Center)という地域に位置しています。「世界で最も忙しい空港」を抱え、高層ビルが立ち並ぶアトランタは、喧騒なメトロポリスというイメージでしたが、現地に着いて、会場の周辺を歩いてみると、平日のせいか、雨のせいか、思いのほか閑散としており、静かな雨に落ち着く感じがしました。あちこちで見られた「ピーチツリー」のついている店や道の名、ちらほらと咲いている小さな白い花の木、スクールバスから手を振ってくれた子どもの笑顔など、アトランタののどかな一面を見ることができました。
さて、今回、2日(金)の午後に、外山研究員は、「防止焦点はパフォーマンスが高いのか?-制御完了の役割に着目して―」、三和研究員は、「制御適合が小学生のパフォーマンスと動機付けを高めるのか」、そして私は、「拡散的思考課題における産出物のカテゴリー制約がパフォーマンスに及ぼす影響-制御焦点を調整変数として-」という内容でポスター発表を行いました。3日(土)の午前中に、長峯研究員は、「制御焦点がメッセージの評価に与える影響-熟知性を調整変数として-」という内容でポスター発表を行いました。
CRET相川研の外山班では、「制御焦点」に着目した研究を進めています。今回の発表内容として、外山研究員は、制御完了(目標が達成されている状態)/制御未完了(目標が達成されていない状態)という概念を用いて、制御焦点とパフォーマンスの関連を検討したものを発表しました。この研究の結果は、創造的パフォーマンスを指標とした先行研究(Bass et al., 2011)の結果と同様に、一般的な認知課題である計算課題のパフォーマンスを指標にした場合においても、防止焦点は、目標が達成されると、後続のパフォーマンスが低いというものでした。三和研究員は、制御適合(個人の目標志向性が方略と合致する)を経験するとパフォーマンスや動機づけが高まるという結果が、小学生においても見られるかどうかについて検討した研究を発表しました。研究の結果は、促進焦点の子どもは、促進焦点と合致する方略(速さを重視する方略)を用いた時に、速さのパフォーマンスが向上するが、一方で正確さのパフォーマンスは関連がみられないというものでした。長峯研究員は、熟知性の低い対象に対する価値において、制御焦点と、ある対象に関する情報的提示が、その対象への評価に及ぼす影響について検討した研究を発表しました。研究の結果は、対象の長所と短所の両面を説明する二面的情報提示において、対象の長所のみを説明する一面的情報提示よりも、対象を高く評価したが、防止焦点においては二面的情報提示と一面的情報提示において対象の評価に差が見られなかっというものでした。そして私は、創造性課題において、産出物の制約(e.g., 産出物の種類を限定する)とパフォーマンスの関連が制御焦点によって異なるかについて検討した研究を発表しました。研究の結果は、産出物の制約が創造的パフォーマンスを高める効果が促進焦点で見られ、防止焦点では見られないというものでした。
ポスター発表時には、制御焦点理論の提唱者であるHigginsラボのメンバーを含むたくさんの海外の研究者にお越しいただきました。その際に、貴重なコメントをいただくことができ、実りある発表となりました。アメリカで提唱された「制御焦点理論」ならびに「制御適合理論」、日本での展開と応用を海外へ発信することは、学術的に意義があると感じます。また、学会発表の中では、私たちの他にも「制御焦点理論」を援用した研究をいくつか見つけることができ、それらの研究者と話し合い、意見交換する中で、有意義な時間を過ごしました。今回の学会で得られた情報を今後の研究に生かしたいと考えています。
12時間以上のフライトや14時間の時差により、やや疲れも感じましたが、これまでCRETで行ってきました研究活動を日本での方々のみならず、海外の方々にも知っていただくことや、海外の研究者から意見をいただくことができ、とても貴重な経験になりました。
Is prevention focus good for performance?: The role of regulatory closure
(Toyama, M., Nagamine, M., Tang, L., Miwa, S., Kurozumi, R., & Aikawa,)
Can regulatory fit improve elementary school students’ performance and motivation?
(Miwa, S., Toyama, M., Nagamine, M., Tang, L., Kurozumi, R., & Aikawa, A.)
Effects of regulatory focus on the evaluation of messages: Focus the familiarity as moderators
(Nagamine, M., Toyama, M., Miwa, S., Tang, L., Kurozumi, R. & Aikawa, A.)
The effects of product constraints on performance in a divergent thinking task: Regulatory focus as a moderator
(Tang, L., M., Toyama, M., Kurozumi, R., Nagamine, M., Miwa, S., & Aikawa, A.)
(CRET連携研究員 湯 立)
外山 美樹 -Miki Toyama-
CRET連携研究員 筑波大学 人間系 教授
趣味: 育児、旅行(温泉めぐり)
研究テーマ: 自己認知が動機づけやパフォーマンス、精神的健康にどのように影響をするのかを研究しています。
http://www.u.tsukuba.ac.jp/~toyama.miki.ga/index.html
長峯 聖人 -Masato Nagamine-
CRET連携研究員 / 東海学園大学心理学部心理学科 助教
趣味:散歩(天気が良い日)、ボードゲーム(主にドイツ製)
研究テーマ:対人関係、感情的動機づけ
2022-08-02
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