CRETから、最新の教育・テストに関する研究発表論文をお届けします。
日本パーソナリティ心理学会第25回大会 発表報告
~社会的望ましさ反応尺度への回答の発達的変化―Web 調査を用いて― ~
2016年9月14日から15日にかけて、関西大学で開催された日本パーソナリティ心理学会第25回大会に参加し、研究発表を行いました。
「関関同立」という言葉がありますが、「関西大学」はよく「関西学院大学」と混同されます(関西地域の方はそのようなことはないかもしれませんが、非関西圏の者には意外と難しいのです)。今回はこの学会と、後続の日本社会心理学会の大会に参加する中で、この2つの会場を巡ることができました。自身の目で、2つの大学の位置やキャンパスの違いを見てくることができたことも、本年度の一つの収穫かもしれません。
さて、私はCRET相川研として実施した、社会的望ましさ反応尺度への回答の発達的変化についての研究発表を14日に行いました。
唐突ですが、みなさんは、「あなたは、人をうまく利用したことがありますか」とか「あなたは、自分の人生を完全に思い通りに進めていますか」と問われて、心の底から「はい」と即答できるでしょうか。もちろん、そう答えられる人もいるとは思いますが、多くの人はためらいを感じるのではないかと思います。以前から、質問紙調査や面接といった自己報告式の調査には、こうした社会的な望ましさによって回答が歪む可能性が指摘されています。近年は、この「社会的望ましさ反応傾向」を測定する尺度も開発されています。端的に言えば、自分を好ましく見せようとしている人を見つけるための尺度があるということです。
この社会的望ましさ反応は年齢層や性別による相違はあるのでしょうか?もし、この尺度の得点が特定の年齢層や性において偏りがあるなら、その年齢層や性をターゲットとした調査においては、社会的望ましさ反応を測定することによる分析精度の向上が期待できるかもしれません。そこで本研究では、幅広い年齢層の方々を対象に社会的望ましさ反応傾向を測定し、年代や性別による相違がみられるか否かを検討しました。
分析結果を要約すると、年齢が上がるほど社会的望ましさ反応傾向は高くなる(社会的に望ましい反応をするようになる)ことが分かりました。この傾向は、ドイツで行われた先行研究とも一致するものです。発表にお越しいただいた方からは、年齢が上がれば自尊心尺度の得点が高くなったり、攻撃性尺度の得点が低くなったりするなど、望ましい特性は高く、望ましくない特性は低く報告されるようになる、ということをご教示いただきました。社会的望ましさ反応傾向も、同様の結果を示しているといえます。ただし、性差については先行研究と一致しない点も見られました。この点に関連して、発表にお越しくださった別の方から、「先行研究(質問紙調査)とWeb調査との違いと言えるのではないか」とのコメントを賜りました。確かに、質問紙調査とWeb調査は、似て非なるものかもしれません。質問紙調査は提出する相手の顔が見えることがほとんどですが、Web調査は調査実施者の顔は見えませんし、匿名性がより高いものになっています。どちらが真実であり、どちらが間違いである、ということではなく、本研究は両者の特性の違いを示唆するデータかもしれないと感じました。このように、自分たちだけで考えているだけでは気づけない観点への示唆をいただけるという点でも、学会などで積極的に研究成果を公表するのは有意義であると感じました。
私はこの学会に入会して6年が経ちますが、いつの間にか学会の広報委員や機関誌の常任編集委員を担当しており、関係性が濃くなってきました。「個人差」という言葉があるように、人はみな違うのですが、その個人差をどう測定するかという点は、従来から研究者を魅了してやまないテーマだと思いますし、私もまた魅了されている者の一人です。
~社会的望ましさ反応尺度への回答の発達的変化――Web 調査を用いて―― ~
(藤井 勉・澤海 崇文・相川 充)
(CRET連携研究員 藤井 勉)
2022-08-02
加藤 由樹
加藤 尚吾
竹内 俊彦
舘 秀典
稲垣(藤井) 勉
澤海 崇文
北澤 武
若山 昇
外山 美樹
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湯 立
三和 秀平
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浅山 慧
2021-07-21
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加藤 尚吾
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外山 美樹
小林 輝美
湯 立
三和 秀平
海沼 亮
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浅山 慧