CRETのコラム/レポート Activities

CRETから、最新の教育・テストに関する世界の動向などをお届けします。

第2回:eポートフォリオの活用法
~どのようにeポートフォリオを活用して学んで行けばよいのか~

(全2回シリーズで、eポートフォリオに関するコラムをお届けします。)
「第1回:なぜ今、高等学校において「eポートフォリオ」が求められているか」はこちら

 

 eポートフォリオを活用した学びは、今、小・中・高等学校で求められる「主体的・対話的で深い学び」そのものです。それは、ただやみくもに暗記することではなく、自ら多くのことに気づき、メタ認知を働かせながら「あ、なるほど!」「なぜだろう?わかった!」「次、同じような時には、こうしよう!」と粘り強く取り組み、自らの学習活動を振り返って次につなげる主体的な学びです。
 eポートフォリオをためることは目的ではありません。eポートフォリオは、生徒を「学びの主役」に引き上げ、主体的に学び続けるアクティブ・ラーナーにしてくれる、欠かすことができないツールなのです。
 
 
1. 学びの振り返りモデル:eポートフォリオを用いた学びの基本形
 
 では、日頃、どのようにeポートフォリオを活用して学んでいけばよいでしょうか。ここでは、eポートフォリオを用いた学び方について説明していきます。
 学びの過程で、思考・判断を繰り返しながら、見たり書いたり、比較したり選んだり、仲間同士で対話したり、、、その瞬間は突然おとずれます。「あっ、わかった!」それは、学びが起きた瞬間です。学ぶとは、気づくことなのです。もちろんそれは、教科の学びだけではなく、探究的な学び、生徒会や部活動、学校行事や旅行行事、個人で参加するボランティアなどの課外で行う諸活動を通した学びでも全く同じです。この学びのベースになるモデルが「学びの振り返りモデル」であり、eポートフォリオを用いた学びの基本形と言ってもよいでしょう。
 

図1 学びの振り返りモデル:eポートフォリオを用いた学びの基本形
 
 日々の気づき(学び)の記録をeポートフォリオとして残していき、ためてきた記録を見返しながら大きく振り返りを行う、という一連の活動を繰り返しながら学んでいく方法が「学びの振り返りモデル」です。
 これまでの授業の内容やスタイルを変えることなく、このモデルを取り入れることで、何を、どのように学んできたのかを振り返りながら粘り強く進める主体的な学びが促進されると共に、学びの記録(eポートフォリオ)が自然にたまり、次の学びに活用していくことができるようになります。その結果、自ずと学びと学びがつながっていきます。
 
【気づきをためるフェーズ】
 まず、生徒は学習過程を通して、多くのことに気づいていきます。ここでたくさんの学びが生起されると共に、eポートフォリオが生成されます。たとえば、授業の終わりなどに、その時間の学びを象徴する写真や成果物(エビデンス)と共に、気づきを記録します(これらがeポートフォリオになります)。そして、これらeポートフォリオはやがて「学びのアルバム」になっていきます。
 ここで、生徒が気づき(学び)をためていく行為は、小さな「学びの振り返り」と言っていいでしょう。しかし、生徒にとって振り返りを書くことは決して容易なことではありません。振り返りとは、頭の中にある考えや思いを外化する(文字や図に表現する)ことなのですが、振り返りに慣れていない生徒はどうしても感想文を作文してしまい、なかなか自分の気づきを記録できません。そこで、気づきを誘発させるためのプロンプト(声かけ)が重要になります。
 プロンプト(声かけ)は、振り返り項目と考えてもらっていいでしょう。たとえば、以下の6つの振り返り項目をプロンプト(声かけ)として、学びの文脈に応じてアレンジし、教師から生徒に問いかけることで、見違えて振り返りが促進され、気づきが記録されていきます。
 
 
【学びを振り返るフェーズ】
 そして、たとえば、単元の終わりなど、学びがある程度進み切りのいいタイミングで、ためてきたeポートフォリオを見て(指をさして)、組み合わせながら大きく学びを振り返ります。特に、個人内での学びの「進歩」、「よい点」、「可能性」について自己評価するとよいでしょう。これにより、学びの定着を図ると共に、学んだことを次につなげることができるようになります。
 ここでのプロンプト(声かけ)は、以下の4つが代表的なものです。学びの文脈に応じてアレンジしてください。
 

 
 なお、この学びの振り返りモデルは、1つの単元、1か月、1学期、1年、複数年など、期間は問いません。振り返りの粒度を変えながら行うことができます。また、一つの教科内だけでなく、教科間、総合探究や特活をまたがった横断的な学びにおいても有効です。
 これを繰り返すことで、学びは深化していくわけですが、その学びを支援し、成長を促す手段が学習評価(アセスメント)なのです。その際、「学びをためるフェーズ」は形成的評価に、「学びを振り返るフェーズ」は総括的評価に対応させて考えるとよいでしょう。
 
 
2. eポートフォリオを活用したアセスメント方法:より多面的・多角的な評価のために
 
 新高等学校学習指導要領解説 総則編では、「単元や題材など内容や時間のまとまりを見通しながら評価の場面や方法を工夫して、学習の過程や成果を評価する」とし、「指導と評価の一体化を図る中で、論述やレポートの作成、発表、グループでの話合い、作品の制作等といった多様な活動を評価の対象とし、ペーパーテストの結果にとどまらない、多面的・多角的な評価を行っていくこと」としています(1)。ここからも、育成すべき資質・能力を多面的・多角的に評価するためには、eポートフォリオの活用が有効的であるということが読み取れます。
 ここで紹介した「学びの振り返りモデル」に基づいた学びを展開することで、eポートフォリオを活用した学びとその評価(アセスメント)を行っていくことは可能です。しかし、さらに詳細な多面的・多角的な評価を行っていくためには、それぞれの学びの文脈に応じて、生徒の学習活動のどのタイミングで、何のeポートフォリオを用いて、どのように評価するかを明らかにする必要があります。
 そこで、筆者らは、この解決の手立てとして、eポートフォリオを活用した学習評価の方法(以下、アセスメント方法)をまとめました(表1)。各アセスメント方法は、生徒の学習活動の何に焦点を当て、どのeポートフォリオを用いて、資質・能力の育成状況を把握し、どう学習支援するかの方法であり、これらは『eポートフォリオを活用したアセスメントハンドブック』として公開しています(2)。これらアセスメント方法を組み合わせて用いることにより、あらゆる学習活動に対しても、適切なeポートフォリオを蓄積・活用しながら多面的・多角的な評価を実施していくことが可能になると期待できます。
 
表1 eポートフォリオを活用したアセスメント方法(2)
 
 
[参考文献]
(1) 文部科学省:高等学校学習指導要領解説 総則編(2018)
(2) eポートフォリオを活用したアセスメントハンドブック<https://sun.u-gakugei.ac.jp/ePortfolio/assessment/> (参照日:2019年5月1日)
 
(CRET連携研究員 森本 康彦)

森本 康彦 -Yasuhiko Morimoto-

CRET連携研究員、東京学芸大学 ICTセンター 教授

研究テーマ:教育工学、特にeポートフォリオ、eラーニング、ICT活用教育、学習評価、情報モラル教育を専門としている

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