CRETのコラム/レポート Activities

CRETから、最新の教育・テストに関する世界の動向などをお届けします。

恥ずかしがりの程度を測る

CRET理事 相川 充

 

 異性と話したり大勢の人の前で発表したりするとき、とても恥ずかしがる人とそうでもない人がいます。何が違うのでしょうか。

 

 それぞれの人の特徴をはっきりさせるためには、人それぞれの恥ずかしがりの程度を測る必要がある。私はそう思って、「私は内気である」とか「私は引っ込み思案である」というような文章を16個用意して、回答者に各文章がどの程度、自分にあてはまるかを、1点から6点までの数字で答えてもらうシャイネス尺度を1991年に発表しました。

 この尺度は、今でも様々な研究で使われていますが、質問紙法という伝統的な方法で作ってあるために、回答者がウソをつけるという欠点を抱えています。回答者は、文章を読めば、自分が何を測られているのか分かりますから、自分のことを良く見せたいときや自分の本心を隠したいときには、適当に答えたり、実際とは違う答えをしたりします。こうなると恥ずかしがりの程度が正しく測れません。

 

 そこで私は今、若い研究者と一緒に、質問紙法とは別の方法で、恥ずかしがりの程度を測ろうとしています。潜在連合テスト(IAT)という方法です。

 これは、パソコンの画面上に、いくつかの単語を次々に映し出して、回答者にそれぞれの単語を、画面の右か左かに分類してもらい、分類するまでの時間を測るものです。例えば、「内気な」という単語を映し出して、回答者にこの単語を画面右の「自己-シャイな」か、画面左の「他者-社交的な」のどちらかに分類してもらい、分類するまでの時間を測ります。しばらくしてから同じ単語「内気な」を、今度は、「他者-シャイな」か「自己-社交的な」のどちらかに分類してもらい、時間を測ります。恥ずかしがりの程度が高い人であれば、「内気な」という単語を見せられたときに、「自己-シャイな」か「他者-社交的な」に分類するときの方が、「他者-シャイな」か「自己-社交的な」かに分類するときよりも短い時間で分類できるはずです。ですから、この時間差を分析すれば、回答者がどの程度恥ずかしがりであるかが分かります。

 

 恥ずかしがりの程度などという実体のないものを測るために、心理学者は、こうして、いろいろな工夫を凝らしている次第です。(2012.12.19)

相川 充 -Atsushi Aikawa-

元CRET理事/元筑波大学 教授/東京学芸大学 名誉教授

コラム/レポート

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CRETの研究領域

テストの評価や解析についての研究を行う。海外の教育テスト研究機関との協同研究や交換プログラムなども実施。







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コミュニケーション能力、チームワーク能力、ソーシャルスキルなどを測定するテスト方法の研究開発を行う。







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