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大学生のためのリサーチリテラシー入門 ―研究のための8つの力―
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大学生のためのリサーチリテラシー入門 ―研究のための8つの力― 山田 剛史・林 創(著)ミネルヴァ書房(2011年5月) 本体価格:2,520円
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本書「大学生のためのリサーチリテラシー入門―研究のための8つの力―」(ミネルヴァ書房) は、岡山大学大学院教育学研究科の山田剛史先生と林創先生が執筆された「リサーチリテラシー(研究を遂行するために必要な基礎的能力)」に関する書籍である。主に学部2~3年生や修士課程1年の学生を対象とし、大学で学ぶにあたって、あるいは、研究し論文を執筆するにあたって必要とされる8つの力とそれらを身に着けるための方法について、心理学の知見も交えながら、丁寧な記述がなされている。
本書の特徴として挙げられるのが、全体に渡り「複眼的なとらえ方」を意識していることである。本書で言う「複眼的なとらえ方」とは、「メタ認知、クリティカルシンキング、心の理論を働かせる」ということであり、例えば、研究成果を学会等で発表する場面においては、「『心の理論』を使って、聞き手の立場に立ち、聞き手を意識」することで、「メタ認知」を働かせることができるようになり、発表もよりよいものとなる。このように、「複眼的なとらえ方」を意識して本書の内容を実践することにより、「リサーチリテラシー」は養われていくのだという。
本書ではリサーチリテラシーに関する8つの力が取り上げられているのだが、ここでは特に、2章の「課題発見力」に注目したい。本書でも述べられているように、研究を行うにあたって最も困難なことの一つが自分自身で研究テーマを見つけることであろう。本章ではこの「テーマの決め方」について、実際に卒論生や大学院生が研究テーマを決めた経緯や「クリティカルシンキング」との関連も踏まえながら的確で明瞭な指針が示されており、既に研究に取り組んでいる大学院生等にとっても、本章から得られるものは多いことだろう。
8つの力としては、「課題発見力」の他にも、「情報収集力」、「データ分析力」といった能力が紹介されているのだが、社会生活を営む上でも、これらの能力は大いに役立つものであろう。これから研究に取り組もうとしている学生や既に研究活動に携わっている学生・大学院生はもちろんのこと、研究活動とはあまり関わりのない方々にも、是非ご一読いただきたい一冊である。