CRETの学会レポート Colomn

CRETから、最新の教育・テストに関する学会レポートをお届けします。

日本社会心理学会第52回大会 参加報告
~口頭発表15「電子ネットワーキング」に参加して~

 2011年9月18~19日、名古屋大学で開催された日本社会心理学会第52回大会において、チームワーク能力尺度の妥当性とチームの構造理解に関する口頭発表を行いました。また、本研究と同様に、電子ネットワーク上での調査回答をテーマにしたセッションに参加しました。
 「電子ネットワーキング」のセッションでは、PCはもちろんのこと、スマートフォンなどの携帯端末も媒体にしたインターネット上での調査研究に関する報告がされました。本報告では、このセッション中の代表的な議論の一つとして挙げられていた、「過大報告」の問題を紹介します。「過大報告」に関する具体的な研究内容に関しては、下記、「電子ネットワーキング」発表者・題目一覧をご参照ください。

 調査研究において、何かの利用頻度を変数にする場合、その利用頻度は、自己報告によるか、客観的な方法(行動観察やアクセスログ解析など)によって測定されます。回答された利用頻度は、自己報告によるものでも、客観的な数値との差が無い方が好ましいと考えられますが、今回のセッション中では、客観的な方法を用いた調査より、自己報告による調査の方が、頻度を多く報告していること(過大報告)が明らかにされました。例えば、インターネットの利用頻度を、自己報告とアクセスログ解析によって調査・比較した場合、自己報告の方が利用頻度を多く報告していました。これでは、自己報告調査自体の信頼性が疑われてしまう。
 この問題に関して、回答者の外向性(自分の外部の世界に関心が強いこと、社会性が高いこと)を要因として探索的に検討している研究者(都築, 2011)や、そもそも社会的望ましさによるものだと指摘する研究者(宮田, 2011)がいましたが、根本的な解決には至っていません。全ての回答者が過大報告をするのであれば、全体の回答データが底上げされるため、それほど大きな問題にはなりませんが、例えば外向性などといったある一定の特性を持った回答者だけが過大報告するのであれば、調査結果の解釈などに大きく歪みをもたらすことが懸念されます。
 インターネット上の調査では、アクセスログの解析データを利用することにより、回答者のネット上での行動に関する客観的な指標を得ることができるという利点があります。インターネットの利用頻度の自己報告では、平均すると過大視が起こりやすいという理由の背景に、社会的望ましさがあるか否かは不明ですが、アクセスログなどの客観的な指標を活用することで、こうしたバイアスの存在やネット上の行動を客観的に知ることができるため、インターネット調査のメリットを活かす工夫が重要であると感じました。

「電子ネットワーキング」発表者・題目一覧 ※1,2
都築 誉史(立教大学) インターネット利用と社会的スキルが対人関係と関係妄想的認知に及ぼす影響
小林 哲郎(国立情報学研究所) スマートフォンを利用した携帯コミュニケーションログの解析※3
加藤 恭子(東京経済大学) Twitter の利用動機と対人関係
五十嵐 祐(北海学園大学) ソーシャルメディアはデマの信憑性評価を抑制するか:孤独感との関連に基づく検討
宮田 加久子(明治学院大学) ネットでの政治的発言を規定する要因の分析※3
※1:発表順による記載
※2:第一著者のみの記載
※3:「過大報告」を示した研究発表

 

(CRET連携研究員 古屋 真)

古屋 真 -Atsushi Furuya-

CRET連携研究員、東京学芸大学・専門研究員

趣味: 水泳、映画鑑賞

研究テーマは、集団知覚とチームワーク能力との関係です。
その他にも、体験活動の教育的効果(「生きる力」など)に興味があります。
「明るく楽しく穏やかに」をモットーに、研究活動や育児に奮闘しています。

学会レポート

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CRETの研究領域

テストの評価や解析についての研究を行う。海外の教育テスト研究機関との協同研究や交換プログラムなども実施。







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コミュニケーション能力、チームワーク能力、ソーシャルスキルなどを測定するテスト方法の研究開発を行う。

相川 充

-Atsushi Aikawa-
筑波大学 人間系
博士(心理学)

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コンピューターベースのテストの基盤研究や、メディアと認知に関わる基礎研究、およびそれらの知見を活かした応用研究および実践研究を行う。

赤堀 侃司

-Kanji Akahori-
東京工業大学 名誉教授

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