研究発表・論文

2011年12月17日

日本教育工学会研究会(地域連携と教育・学習環境/一般) 発表報告

 2011年12月17日に香川大学林町キャンパスで開催された、日本教育工学会研究会(地域連携と教育・学習環境/一般)に参加し、「大学教科書マンガにおける女性登場人物に対する好感度に関する調査」と題し、口頭発表をしました。本発表は、2010年度にCRETにて調査を行った結果の一部です。

 近年、マンガやイラストレーションが様々な分野で注目を集めています。教育分野も例外ではなく、以前よりマンガで学ぶテキストが一般に発売されていたり、数年前からは高等学校の教科書にマンガが用いられるようになったりしています。筆者らは高等教育でマンガを利用することに着目し、マンガをどのように提示することで大学生の好感を得て、興味関心を引き、学習効果を上げることができるのか研究を行っています。今回は、大学生に好感をもたれる女性キャラクターの特徴を調査しました。また、学習前に「興味を抱く」ために、手に取りやすい表紙はどのようなものかも調査しました。

 最近では、文学小説などの表紙にすら、人気アイドルの写真を用いたものやマンガイラストを用いたものが多く出版されています。そこで、本調査では、従来型の表紙、女子大学生の読書姿の写真表紙、その写真をマンガイラスト化した表紙の3つを比べることで、それぞれがどのような評価を得るかを調査しました。結果、女子大生の読書姿を使用した写真表紙が一番好感度が高くなりました。特に、女性被験者は自分と同世代の同性の姿に興味を覚えたようです。
 マンガ教科書を作成する場合、主人公のキャラクター選びは大変重要だと考えています。そこで、どのような女性キャラクターが好まれるのかを調査しました。一人の女性イラストを髪形・服装・体型・姿勢の4要因を変化させ、全24パターンに変化させたものを描き、一番好ましいキャラクターを選んでもらいました。結果、ロングヘアで、ワンピースを着た胸の目立たないキャラクターが好まれました。女性的であることが好まれる要因の一つのようですが、胸のように性的な部分が強調されると嫌悪される傾向にあるようです。

 今回、参加した日本教育工学会の研究会では、他にもさまざまな研究が発表されていました。現在、全国の小学校でICT機器の導入がなされていますが、特にプラズマテレビの教室への設置が早かったようです。そこで、プラズマテレビを教室に固定設置する際の適切な位置を調査する研究がなされていました。結果によると、窓からの反射光を抑えるためにも、教室の窓側前に設置するとより児童に見やすい位置となるとのことでした。
 他にも、超大型スクリーンを用いた大学授業の研究や、ICT機器別に学習効果を測定した研究、グループワークの効率性に関する研究など教育工学の様々な分野の研究状況、結果を拝聴することができ、有意義な研究会参加となりました。

(CRET連携研究員 周村 諭里)

2011年7月16日〜17日

日本カリキュラム学会第22回大会 発表報告

 2011年7月16日(土)〜17日(日)に北海道大学で開催された、日本カリキュラム学会第22回大会に参加し、自由研究のセッションで発表しました。その概要を、以下のように報告します。


 始めに、メディアと学習の関わりについて1970年代から現在までの変遷を、教育理念との関連で図示して説明しました。その変遷は、まるで振り子のように教育理念を行き来していますが、これは日本だけの現象ではなく、世界的にも同じような傾向であることが、外国の研究者によって報告されています。

 次に2010年代に登場して、現在脚光をあびているデジタル教科書について、下記のような観点で、説明しました。
1. 学校教育の情報化に関する懇談会(文科省)について
2. フューチャースクール(総務省)の動向について
3. 民間の動向について
4. デジタル教科書の用語について
5. 紙教科書との併用について
6. 教科書の検定制度について
7. 予算化について
8. 教員研修と支援について
9. 情報端末について
10. その他の検討課題について
会場からは、教育の情報化ビジョンと教育理念の関連についての質問、instructionとconstructionの違いとメディアの関わりについての質問がありました。

 参加したシンポジウムでは、カリキュラムマネージメントの方法論が興味深く、その方法論は、教育工学のインストラクショナルデザインに似ており、基本はPDCAサイクルであることがわかりました。但し、カリキュラム学会では、あるべき姿の理念を先行することに対し、教育工学会では、教育実践のニーズを先行させる違いがあり、研究方法の枠組みの違いが興味深く思いました。札幌市は小雨の降る天気で、肌寒い2日間でした。

赤堀侃司(2011), 教育課程におけるデジタル教科書の役割と今後の課題
発表論文PDF(306KB)


(CRET理事 赤堀 侃司)

2010年12月18日

日本教育工学会研究会 発表報告
〜マンガ教材における紙とデジタルのメディア比較〜

 2010年12月18日に大分大学旦野原キャンパスで開催された、日本教育工学会研究会(ICTを活用したFDと大学・高大連携/一般)に参加し、「マンガ教材における紙とデジタルのメディア比較」を発表しました。

 筆者は、既存の教育マンガをデジタル教材として利用するために、マンガのコマ割りを認識するソフトの開発を計画しています。本研究は、ソフト開発の前段階として、コマ割りしたデジタル教材と紙のマンガ教材に差異があるかを調査したものです。具体的には大学生を対象に、映画史に関するマンガ教材を紙のまま配布した紙群(20名)と、Power Pointファイル化し、エンターキーを押すごとに1コマずつ表示させる教材で学ぶデジタル群(20名)の2群に分けて実験を行い、成績や読み終えるまでの時間、印象などを比較しました。

 研究仮説は、[1]紙のマンガのほうが速く読める、[2]映画史の知識を問う試験の成績は1コマずつ時間をかけて読んだデジタル群のほうが良い、[3] マンガの登場人物などに関する設問の得点は大差ない、[4]紙のマンガのほうが読みやすいと被験者は感じる、というものです。

 実験の結果、[1]には有意差がありました。つまりマンガを読む時間は、デジタル群のほうが、紙群よりも1.5倍の時間がかかっていました(1%有意)。これは、デジタル群は1コマずつエンターキーで読み進める必要がある分、時間がかかったものと思われます。[2]に関しては、映画史に関する成績には、30点満点でデジタル群は22.8点、紙群は20.6点と、デジタル群のほうがやや成績が良く、弱い有意傾向がありました。デジタル群では、1コマずつに分けられている分、マンガでは時間をかけてじっくり読むことを強制されるせいではないか、と考えられます。[3]に関しては事前の予想に反しました。マンガのキャラクターに関する設問については、デジタル群は4.85点、紙群は3.70点と、デジタル群のほうが成績が良い(5%有意)という結果になりました。これも、デジタル教材では1コマずつ読むようにしたため、時間をかけて読んだ効果が大きいと考えています。[4] に関しては、Q40「Power Pointマンガ教材のほうが、紙のマンガ教材より読みやすいと思う」というアンケート設問について、群間に有意差はなかったことから、デジタル群と紙群に、特に読みやすさの差はなかったと結論しました。

 本研究会は全国大会の直後ということもあり、通常よりも発表件数が少なく、また、2会場で同時開催でした。実は本会場の参加者はわずかで、もう一方の会場では、マンガに関する研究が連続して発表されており、そちらの方が大盛況でした。この研究会では、他にも、電子教科書に関する研究も数多く発表され、今後の教育・学習環境についての深い議論がなされ、研究のヒントを大いに得ることができました。

 以上から、マンガをデジタル化し、1コマずつ読ませることは、じっくり時間をかけて読ませる分、教育効果が高まると期待して良さそうであり、マンガのコマごとの切り分け機能を開発する価値があるという結論に至りました。

 発表した会場からは、「紙群とコマ割りしたデジタル群の比較ではなく、コマ割りしないデジタル教材と、コマ割りしたデジタル教材で比較すべきではないか」という質問が複数あり、次回の実験で対応する予定であると説明しました。
 他の発表に関しては、森裕生氏、尾澤重知氏の「iPodと写真共有アプリを用いた学生間ノート共有の試み」が興味深いと感じました。学生に自分のノートを撮影させ、ポートフォリオとして蓄積し、後にiPodで振り返りを行うというものです。

竹内俊彦(2010). マンガ教材における紙とデジタルのメディア比較,
日本教育工学会研究報告集, JSET10-4, pp.67-70.論文PDF(1.3MB)


(CRET連携研究員 竹内 俊彦)

2010年10月23日

日本教育工学会研究会 発表報告
〜読解時のアノテーション量と記憶の関係に関する研究〜

 2010年10月23日に、茨城大学にて開催された日本教育工学会研究会で口頭発表を行いました。本発表は、2009年度から継続して行っている、ペーパー試験におけるアノテーションに関する研究についてです。特に、一番素朴な疑問として常にある、読書をしている時のアノテーションの量と成績の関係について発表しました。

 私たちは日常的に、読書をする際に、線を引いたり、マーカーをつけたり、自分のオリジナルの印をつけたりと、いろいろなアノテーションを行っています。以前から指摘されておりますが、試験の読解問題でもそれは同様です。しかし、ペーパーベースの試験であればそれが自由に行えますが、コンピュータベーステスト 環境下ではアノテーションは通常できません。許可されていないというよりも、そういう機能自体が実装されていないことがほとんどだと思います。もしアノテーションの有無が試験の結果に影響を及ぼすならばCBTにもそれ相応のインタフェースを実装する必要があるでしょう。学習時のアノテーションの有効性はある特定条件化で有効であることがわかっていますが、試験のような限られた時間内では、アノテーションの有効性が疑わしいことなります。本研究では、特に、アノテーション量と記憶に関する相関について調査した結果を報告しました。

 結果、日本語文章の読解と記憶に関しては、アノテーション量とは相関がみられないことが分かりました。想起される日本語は、当然アノテーションした内容であろうと単純には考えられますが、実は、そうとは限らず、想起内容とアノテーションした個所の関係も薄いことがわかりました。また、日常的にアノテーションする学生がそれを禁止されたからといって大きな影響がみられないことも分かりました。ということは、普段、紙におけるアノテーションをしている学生が、試験時にアノテーション機能をもたないCBTで試験をうけても、あまり試験結果には影響がないことがわかります。私たちの研究では、もしアノテーションの有無が試験成績に影響を及ぼすなら、CBTにもアノテーション機能を実装すべきだという前提でしたが、一連の研究によりすべて否定されたというわけです。

 本研究会は全国大会の直後ということもあり、通常よりも発表件数が少なく、また、2会場で同時開催でした。実は本会場の参加者はわずかで、もう一方の会場では、マンガに関する研究が連続して発表されており、そちらの方が大盛況でした。この研究会では、他にも、電子教科書に関する研究も数多く発表され、今後の教育・学習環境についての深い議論がなされ、研究のヒントを大いに得ることができました。

柳沢昌義(2010). 読解時のアノテーション量と記憶の関係に関する研究,
日本教育工学会研究報告集, JSET10-4, pp.123-128.論文PDF(184KB)


(CRET研究員 柳沢 昌義)

2010年9月18日〜20日

日本教育工学会第26回全国大会 発表報告
〜デジタルペン、タブレットPC、PCおよび紙と鉛筆の4種類のメディアを用いた試験に関する比較分析〜

 2010年9月18日〜20日に金城学院大学にて開催された日本教育工学会26回全国大会でポスターセッションにて発表しました。以下、報告内容と質疑・感想などを紹介いたします。

 コンピュータベースの試験(CBT)が、今後さまざまな場面で導入されると考えられます。CBTでは、従来の紙と鉛筆とは異なる問題提示や解答の仕方が求められます。例えば、問題提示では、紙かPC画面かの違い、解答方法では、キーボード入力もあれば、タッチペンを用いたもの、また、紙に書いた文字を認識できるデジタルペンも考えられます。そのため、CBT研究の一つとして、従来の紙・鉛筆とCBTで用いられる可能性のあるメディアとを比較し、それらのメディアでの問題提示や入力が試験へ及ぼす影響を調べる研究は重要と考えられます。

 本研究の目的は、試験に用いるメディアとして、デジタルペン、タブレットPC、PCそして、紙と鉛筆の4種類を比較しました。具体的には、大学生被験者96名を、人数性別ともにほぼ均等になるようにそれぞれのメディアに4群に分け、PISA2003の「読解力」試験問題を解答してもらう実験を行いました。なお、デジタルペンについては株式会社日立製作所のデジタルペンシステム、及びアノト社のデジタルペンを用いました。以下で、群間で成績等を比較分析した結果を示します。

 今回の「読解力」試験には多肢選択問題と記述問題がありましたが、多肢選択問題ではメディア間の差が見られませんでした。一方、記述問題の一部については、メディア間に成績の差が見られました。これらは、デジタルペン群と紙と鉛筆群で、タブレットPC群とPC群よりも点数が高いという結果でした。
 今回の記述問題には、解答者の意見を論理的に述べるものと、提示された長文に書かれていることの中で該当する部分を抜き出して論じるものがありましたが、差が見られたのは、抜き出して解答を行う問題でした。すなわち、問題が紙で提示され、別紙の解答用紙に解答を行うデジタルペン群と紙と鉛筆群で点数が高いという結果でした。一方、長文と問題文をスクロールしながら見て解答を行うタブレットPC群とPC群では、点数が低い傾向がありました。この解答の仕方の違いが、点数に影響を及ぼしたと推察されます。 また、いくつかの記述問題において、紙に解答するデジタルペン群と紙と鉛筆群で解答文字数が有意に多いこともわかりました。

  ポスター発表の会場では、メディア比較に興味を持たれた多くの研究者の方から、本研究の意義を高く評価していただき、今後の継続的で詳細な実験、分析を期待するとのコメントをいただいきました。今後の研究活動に生かしていきたいと思っています。

加藤由樹, 加藤尚吾, 赤堀侃司, 吉本真代, 杉山康彦 (2010). デジタルペン、タブレットPC、PCおよび紙と鉛筆の4種類のメディアを用いた試験に関する比較分析,
日本教育工学会第26回全国大会講演論文集2010, pp.681-682.論文PDF(263KB)

杉山康彦, 加藤由樹, 加藤尚吾, 赤堀侃司, 吉本真代(2010). デジタルペンを用いた読解力測定試験の試行と一考察, 日本教育工学会第26回全国大会講演論文集2010, pp.949-950.
論文PDF(299KB)


(CRET連携研究員 加藤 由樹)

2010年9月18日〜20日

日本教育工学会第26回全国大会 発表報告
〜機械学習を利用した短答式記述答案の自動識別〜

 2010年9月18日〜20日に金城学院大学にて開催された日本教育工学会26回全国大会でポスターセッションにて発表しました。

 国際的な学力調査の結果を踏まえて「言語力」育成が叫ばれている今日、記述式試験の重要度が高まると予想しますが、記述式の採点には手間がかかります。また、デジタル環境の普及によって、コンピュータを用いた試験でも記述式問題を容易に出題できるようになっています。Webやブログのように、解答内容がデジタル化されていれば、これらをコンピュータで分析することが可能です。大量の答案を効率的に採点し、採点にかかる手間を減らすためには記述式解答に対してコンピュータを利用した自動採点・採点支援を行うことが有用であると考えます。

 本研究では機械学習という手法を利用して短答式記述問題解答の得点予測を行いました。採点済み答案の一部を単語に分解し、単語の出現パターンと得点との関係をコンピュータに学習させ、残りの答案にこの学習内容を適用してコンピュータの予測得点を出力します。予測得点と人手による採点結果とを比較することでこの方法の精度を検証しました。
 当日の発表では、全体的な精度は実用には遠く及ばないものの、一部の答案については複数回予測の多数決で予測精度が向上できたこと、採点基準を考慮した工夫によって精度向上の余地があることを報告しました。また、従来はこのような処理の各工程(単語の切り出し・機械学習・グラフ表示等)はそれぞれ専用のプログラムを必要としましたが、本研究ではR言語の拡張機能を使用し、全ての処理をR言語上で行ったことも紹介しました。
 会場や時間の制約等で議論できた人数は限られましたが、私が考慮していなかった箇所の指摘を受けるなど、今後の研究に役立つ発表となりました。今後もCRETではこのような各種学会における情報収集・研究交流に勤め、また、自らの研究成果をこれらの学会、研究会等で対外的に発信していきたいと思います。

中島功滋(2010). 機械学習を利用した短答式記述答案の自動識別
日本教育工学会第26回全国大会講演論文集2010, 639-640論文PDF(250KB)


(CRET協力研究員 中島 功滋)

2010年8月30日〜31日

日本リメディアル教育学会第6回全国大会 発表報告
〜大学の教育現場の立場から〜

 8月30日と31日の両日、湘南工科大学にて日本リメディアル教育学会が開催されました。大会実行委員長は、CRET研究員でもある水町龍一氏で、同じくCRET研究員である御園真史氏も実行委員として活躍しました。
 私は、8月30 日(月) 14:20〜16:20に、大講義室で行われたメインシンポジウムの指定討論者として壇上に登りました。テーマは「高大接続問題と学士力を保障する大学教育」であり、CRETとしてきわめて興味深い内容でした。登壇者は以下の通りです(大会記載目次から)。

 1.「接続」の問題
   社団法人全国学力研究会理事長 河本 敏浩

 2.日本型高大接続の転換点
   −「高大接続テスト(仮称)」が提起するもの−
    北海道大学特任教授 佐々木 隆生

 3.指定討論:大学の教育現場の立場から
   白鴎大学教授・東京工業大学名誉教授 赤堀 侃司

 佐々木氏の提案された高大接続テストは、きわめて評判が高く、今日注目されているテストで、大学入試センター試験に代わる高大接続を想定したテストです。従来のテストが集団準拠型テストであることに対して、高大接続テストは目標準拠型テストであり、多くの参加者の興味を引きました。
 私はこれらの問題提起に対して、学士力を保障するには、学習習慣の定着、学習スキルの獲得、目標を持たせる教育が重要であるとして、その観点から、高大接続テストの在り方について質問をしました。多くの参加者の反響を呼び、この記録を日本リメディアル教育学会の論文誌に掲載することが検討されています。私もその後の懇親会で、何人かの先生方から質問を受けました。


(CRET理事 赤堀 侃司)

2010年7月3日〜4日

日本カリキュラム学会第21回大会 発表報告
〜日本と中国における中学生の学習動機と数学学力の比較調査〜

 「日本と中国における中学生の学習動機と数学学力」を比較調査したデータの再分析結果を、2010年7月3日と4日に佐賀大学で開催された日本カリキュラム学会にて、発表しました。

 本研究は、赤堀侃司・劉雲龍氏(三菱化学(株))の共同研究です。数年前に実施した調査研究ですが、今年になって、劉氏と一緒にこれらのデータを見直し、再分析を行いました。その理由は、中国の国際学力を測定したという点では、ほとんど知られていないこと、その結果が、私たちの予想を超えていたこと、同時に、テスト結果は、カリキュラムや保護者や生徒達の意識の違いや、広く言えば、文化の違いに起因することが、示唆されたからです。

 初めに、その背景について簡単に説明しておきます。中国は、これまで、ほとんど国際学力調査に参加していません。しかし、シンガポールや台湾や香港などの国際学力調査の結果から予想されるように、中国系の子供たちは、きわめて高い成績を示しています。このことから、中国の厳しい受験競争から考えると、日本の子供たちよりも優れた成績を示すのではないかと予想できますが、中国の農村部は都市部に比べて大きな経済格差があって、そんなに良い成績を示すとは期待しませんでした。


インタビューの様子

   結果は、中国農村部がトップ、次が中国都市部、最後が、日本の生徒という結果でした。詳細は、発表要旨をご覧ください。それが、どこに起因するのかを分析する必要があり、私たちは、生徒と保護者のアンケート調査を実施して、成績との相関を調べました。同時に、中国の生徒と先生方に対面でインタビューを実施しました。その結果、わかったことは、暗い受験競争のイメージではなく、希望や夢や目標に向かって進んでいるような意識の違いでした。それは、今日の日本と中国の政治経済の勢いの反映と思われました。また、農村部が、都市部や日本よりも優れた成績を示したことは、驚くべき事実でした。OECDの分析や他の研究文献とは異なり、経済よりも文化や意識の差のほうが、学力に与える影響が大きいという結果でした。

 課題は、結果の信頼性ですが、829名の生徒を対象にして、実際にテストを実施したことは、ある程度評価していいと思いますが、中国は広く、地域間の影響が大きいかもしれません。今後は、劉氏と共同研究を進めて、中国の指導方法や教育理念との関連で分析をしたいと思っています。写真は、実際に調査している光景です。
 会場では多くの質問があり、発表後も、数人の研究者から共同研究したいという申し出がありました。


(CRET理事 赤堀 侃司)

2010年6月27日〜7月1日

ED-MEDIA2010 発表報告
〜CBT and paper testing in an examination of regular expression, using university students as research subjects (大学生を対象とした正規表現の試験におけるCBTと紙の比較)〜

 2010年6月27日〜7月1日にカナダのトロントで開催されたED-MEDIA2010にて、学会発表を行いました。本研究は、竹内俊彦と涌井智寛氏(茨城大学)の共同研究です。

 本研究の目的は、コンピュータを用いたテスト(CBT: Computer Based Testing)と紙のテストを比較することです。  正規表現のような学習分野では、CBTであれば回答者は自分の回答をシミュレーションできます。ゆえにCBTでは、紙のテストにくらべて成績が非常に良くなる、回答者が成績を正確に予想できる、解答欄を空白にする率が上昇する、回答者の試験後の印象が良くなる、という仮説を立てました。


 この仮説を検証するために、さまざまな大学の1〜4年生の40名に1時間の正規表現の授業を行い、その直後に20名ずつの2クラスに分けたのち、同じ12問の問題からなる試験を、一方のクラスにはCBT、一方のクラスには紙のテストで行いました。また各問題に対する自信度や、受験者の属性に関するアンケートにも、試験前と試験後に回答させました。
 実験の手順は ・正規表現の授業(60分) ・テスト前アンケート(5分) ・休憩(10分) ・正規表現のテスト(20分) ・テスト前アンケート(5分) の順で行い、正規表現の授業では、CBTとほぼ同様のソフトを用いて授業を行いました。図1にCBTで用いたシステムを示します。

 実験の結果、12点満点のテストで、CBTのテスト群(5.85点)は紙群(5.05点)よりも少し成績が高いが、有意差はありませんでした。また自分の予想点と実際の得点差の平均値についても、CBTのテスト群(1.50点)と紙群(1.80点)の間に大きな差はありませんでした。しかし解答欄を空白にする率においては、CBTのテスト群(4.58個)は紙群(0.08個)と非常に大きな差が見られました。
 つまり、正規表現に関するCBTのテストでは、受験者は「解けるまで問題にチャレンジし、自信があったときだけ回答する」が、完全を期するあまり最初のほうの問題に時間をかけてしまい、すべての解答欄を埋める時間がなくなってしまうため、成績的には紙群と大差なくなる、という傾向がありました。

 また、質疑応答では「研究者は『CBT群のほうが問題を解くのに熱中したため時間が足りなくなった』と主張したが、紙群が解答欄の空白率が低いのは、むしろ紙群のほうがCBT群より頑張った証拠ではないか」という意見がありましたが、実際に現場で被験者を観察していた経験及びトータルの正解率が大差ないところをみても、紙群はとにかく空白を避けるために適当な回答を埋めていたという印象を持ちました。
 (発表内容の詳細については、論文PDF/当日資料PDFをご参照ください。)


(CRET連携研究員 竹内 俊彦)

2010年5月15日

日本教育工学会研究会 発表報告
〜試験問題に登場する励ましの言葉をかける今風のキャラクター画像が受験者に及ぼす影響に関する検討〜

 試験の始めや途中で、人物画像から発せられる励ましの言葉を挿入することの効果について実験を行い、北海道教育大学旭川校で開催された、日本教育工学会 研究会で口頭発表しました。

 試験に関する研究のほとんどでは、認知的な側面に焦点を当てた検討が行われています。しかし、受験者の情意面も成績に影響することは、経験的に明らかです。例えば、受験者の多くは、試験中に緊張や焦りを感じていると考えられますが、そこでちょっとしたリラックスがあれば、試験の成績や取り組み方に良い影響を及ぼすのではないでしょうか。

 そこで、本研究では、試験中の受験者をリラックスさせるためのアイデアとして、問題の途中でキャラクター画像が現れて励ましの声掛けをすることについて、試験への影響を調べました。なお、本研究は、励ましの言葉をかけるキャラクターの効果を検討するための第一段階として2009年度にCRETが行った研究(加藤由樹・加藤尚吾・赤堀侃司,2009)の追加研究です。
 本研究でも加藤他(2009)と同じく、紙ベースの試験問題の始めや途中に、人物キャラクターから発せられる励ましの言葉を提示することで、受験者の緊張を軽減し、リラックスして試験を受けることができるのか、あるいはその逆に、ネガティブな影響があるのかを調べました。さらに、キャラクターの励ましを用いることによって課題の遂行に影響があるのかも調べました。

 なお、加藤他(2009)と異なる点は、以下です。加藤他(2009)では、男子中学生、女子中学生、鉛筆のキャラクターが励ましを行う3種類の条件および励ましの言葉だけを示す条件を用いて、条件間の影響を比較しました。しかし、特に人物のキャラクター(男子中学生と女子中学生)の画風が今風ではなく、最近市販される教材ではこの画風をほとんど見かけません。そこで、本研究では、最近よく利用される今風のキャラクター(一般に、萌え系と呼ばれる)を用いました。また、加藤他(2009)では、大学生である被験者にとって年下である中学生のキャラクターのみであったため、本研究では、教師風の大人のキャラクターも用いました。さらに、キャラクターも励ましの言葉もない条件も加えました。

 これらの条件における、試験の成績や取り組み方への影響を分析した結果、キャラクターの励ましが受験者の試験への取り組みに特に効果のあることが示唆されました。また、先行研究との比較から、今風の画風でより効果的な可能性が示唆されました。なお、試験の成績に関しては、統計的に有意な差は見られませんでした。結果から、キャラクターによる励ましが、試験中の中だるみを減らし問題への取り組みを持続させたと考えられます。

 今回の研究会で結果を報告した後、参加者から多くのコメントをいただきました。それらをまとめますと、(1)成績よりも取り組みに影響を及ぼした点から、学習活動においてより有効ではないか。(2)試験内容によって影響はどう変わるのか、変わらないのか。(3)紙ベースの試験ではなくCBTでも試してみるとよい。(4)キャラクターの励ましが受験者をリラックスさせたのかはわからない。となりました。
 いただきましたコメントを参考に、本研究では不明な点を明らかにしていきたいと考えています。
 (発表内容詳細については、発表論文PDFをご参照ください。)


(CRET連携研究員 加藤 由樹)

 

2010年5月15日

日本教育工学会研究会 発表報告
〜大学生を対象とした正規表現の試験におけるCBTと紙の比較〜

 正規表現に関する試験を、CBTと紙で比較する実験を、大学生を対象に行い、北海道教育大学旭川校で開催された、日本教育工学会 研究会で口頭発表しました。

 本研究の目的は、コンピュータを用いたテスト(Computer Based Testing 以下、CBT)と紙のテストを比較することです。
 正規表現のような学習分野では、CBTであれば、回答者は自分の回答をシミュレーションできます。 そのためCBTでは、下記の予想を立てました。

 [1] 紙のテストにくらべて成績が非常に良くなる
 [2] 回答者が成績を正確に予想できる
 [3] 解答欄を空白にする率が上昇する
 [4] 回答者の試験後の印象が良くなる

 この仮説を検証するために、さまざまな大学の大学1〜4年生の40名に1時間の正規表現の授業を行いました。その直後に20名ずつの2クラスに分け、同じ12問の問題からなる試験を、一方のクラスにはCBT、一方のクラスには紙のテストで行いました。また、各問題に対する自信度や、受験者の属性に関するアンケートにも、試験前と試験後に回答させました。

 実験の結果、12点満点のテストで、CBTのテスト群(5.85点)は紙群(5.05点)よりもすこし成績が高い程度で、有意な差はありませんでした。また、自分の予想点と実際の得点差の平均値についても、CBTのテスト群(1.50点)と紙群(1.80点)の間に大きな差はありませんでした。 しかし、無答率においては、CBTのテスト群(4.58個)は紙群(0.08個)と非常に大きな差が見られました。
 つまり、正規表現に関するCBTのテストでは、受験者は「解けるまで問題にチャレンジし、自信があったときだけ回答する」が、完全を期するあまり最初のほうの問題に時間をかけてしまい、すべての解答欄を埋める時間がなくなってしまうため、成績的には紙群と大差なくなる、という傾向がありました。

 質疑では「CBTと紙の比較」というより「シミュレーション可能なテスト」に焦点を当ててはどうか、という意見が出されました。
(発表内容詳細については、発表論文PDFをご参照ください。)


(CRET連携研究員 竹内 俊彦)

2009年10月27日

E-Learn2009発表報告
〜数学の問題をアニメーションで出題するCBTの研究開発報告〜

 CRETテスト基盤研究の一環として、アニメーションのみで数学の問題を出題する新しいCBTの開発と評価を行いました。この研究結果を10月下旬にカナダ・バンクーバーで開催された国際学会、E-Learn(World Conference on E-Learning in Corporate, Government, Healthcare, and Higher Education 2009) においてShort Paperとして発表しました。

 この研究は、複雑な数学の文章題を出題した場合、その試験結果が問題文を理解するための読解力に依存してしまう可能性があることから、本来の数学能力を測定する方法はないだろうか、という問題設定からスタートしました。具体的には4つの数学の問題(立体図形、速さ、鶴亀算、図形の軌跡)を,それぞれアニメーション版と文章版で作成し、20人の大学生被験者に対して小規模な実験を行いました。今回の実験では各数学の問題の正解率を測定するのではなく、問題の内容自体をどれだけ早く正確に把握できたかについて測定しています。

 実験の結果、アンケート評価ではアニメーション版の方が簡単そうだという印象面で有意な差はあったものの、問題の理解度のルーブリック評価や、理解までにかかった時間ではアニメーションと文章どちらの場合であっても、有意な差は見られませんでした。学会ではこれらの実験結果から、文章の代わりにアニメーションをつかって数学の文章題が出題できる可能性を示唆した、という結論を報告しました。

 また、発表会場で3名から質問やコメントが挙がりました。実験や分析方法の詳細を確認する質問のほか、発達障害を持つ子どもに対する問題の提示方法としても有効だというコメントや、アニメーションによるアイテムバンクを充実させるためのアドバイス、他の理数教科への応用も可能ではないか、といったポジティブな意見が得られました。

 この実験は、出題した問題や被験者特性に依存した可能性も考えられますので、今後も検証を続ける予定です 。


(CRET研究員 谷内 正裕)

2009年10月24日

日本教育工学会研究会発表報告
〜試験問題に登場する励ましの言葉をかけるキャラクター画像が受験者に及ぼす影響に関する検討〜

 コンピュータベースの試験(CBT)が、今後さまざまな場面で導入されると考えられます。CBTでは、試験問題の提示や解答方法の制約が、紙ベースの試験に比べて小さいといえます。例えば、画像や動画を用いることもできます。研究は、その効果を検討するための第一段階として行われました。試験の始めや途中で人物画像等から発せられる励ましの言葉を挿入することで、受験者の緊張を和らげ、リラックスして試験を受けられるのか、あるいは逆にネガティブな影響があるのか、さらに課題の遂行に影響があるのか、紙ベースの実験を実施して検討しました。

 具体的には、十分な時間が与えられれば正答できる、単純ではあるが単調で面倒でイライラするような試験問題を準備し、被験者に解答を求める実験を行いました。この試験の間、問題の始まりや途中で現れる励ましの言葉の提示に関して以下の4つの条件を用意し、上記の視点で比較しました。(1)男子が励ましの言葉を発するイラストを用いる条件、(2)女子が励ましの言葉を発するイラストを用いる条件、(3)鉛筆が励ましの言葉を発するイラストを用いる条件、(4)キャラクターのイラストがなく、励ましの言葉のみを用いる条件。その結果、人物画像による励ましの挿入は、課題の成績や受験者の感情に悪影響を与える可能性が示されました。

 今回の研究会で結果を報告した後、参加者から多くのコメントをいただきました。それらをまとめますと、(1)今回使用したキャラクター画像以外にも様々なものがある。別の画像を使うなどして継続的な検討を要する。(2)今回の実験では、男子と女子の画像を用いている。従って、提示された側(被験者)の性別との関係を調べたらどうか。(3)キャラクターの年恰好が中学生ということで、大学生の被験者にとっては年下からの励ましになる。それは気分のいいものでないのかもしれない。(4)試験問題が単調なものでなく、難しいものにしたら結果が変わるかもしれない。

 いただきましたコメントを参考に、研究を続けていきたいと考えています。

加藤尚吾,加藤由樹,赤堀侃司(2009).試験問題に登場する励ましの言葉をかけるキャラクター画像が受験者に及ぼす影響に 関する検討 日本教育工学会 研究報告集,JSET 09-4,91-96.
論文PDF(373KB)

(CRET連携研究員 加藤 尚吾・加藤 由樹)


2009年10月24日

教育工学会研究会発表報告
〜アノテーションの有無が単純な試験に与える影響に関する研究〜

 一般に、試験において学生は、試験問題の上にアンダーラインをひいたり、○や□でキーワードを強調したり、あるいは、欄外に様々な書き込みをするなどといったアノテーション行為を行っています。ペーパーベースの試験であればそれが自由に行えますが、コンピュータベースのテスト(CBT)環境下ではアノテーションは通常はできません。もしアノテーションが試験の成績に良い影響を及ぼすならば、CBTにもそれ相応のインターフェースを実装する必要となります。そうしないと、両者で差ができることになります。また、その逆に、何の差もないのならCBTのインターフェースは、アノテーションができるように改良せずとも、旧来のままで十分ということになります。

 本研究では、まずは、単純な試験におけるアノテーションの効果を、アノテーションを許可する群と許可しない群に分けて実施し、その効果を調べました。また、被験者の日常のアノテーション行動とアノテーション行動の制御の関係を調べました。

 結果は意外とアノテーションの優位性はそれほど明らかではなく、アノテーションが圧倒的に有利な状況下でのみアノテーションは有効だが、一般には差異がないことがわかりました。逆に、難易度が高い文章読解や、アノテーションの方法が形式化されていない場合には、アノテーションが回答を妨害する可能性までもが示唆されました。問題の難易度とアノテーションの効果の関係や、アノテーションの正しいやり方の教授の有無とその効果の検証など、残された課題は多くあります。

 発表当日は、私たちが本を読むときに何気なく行う線引き行為も、難易度が高くて時間が十分あるときのみに有効であるといった先行研究も紹介し、アノテーションの効果がそれほど明白ではない点について、会場からは意外であるとの声がありました。本研究に対しては、研究内容の詳細を聞く質問が主となり、それほど議論にはなりませんでしたが、今後の分析への期待があったものと思います。なお、本研究では、実験に協力してくれた学生の、日常的なアノテーション行為と試験成績の関係までは分析としておりませんので、また次回以降、結果を公表したいと思います。

柳沢昌義(2009).ペーパー試験に与えるアノテーションの影響に関する研究
日本教育工学会 研究報告集,JSET 09-4,97-104.論文PDF(295KB)

(CRET研究員 柳沢 昌義)


2009年9月2日

第5回日本リメディアル教育学会全国大会
「大学授業研究の方法論と初年次教育への適用」発表報告

CRET理事の赤堀侃司先生が、2009年9月1日〜2日に千葉科学技術大学で開催された第5回日本リメディアル教育学会全国大会で発表を行いました。初年次教育の授業を対象に、研究方法としてDesign Based Researchを用いて、授業の分析、デザイン、評価を実施し、その結果得られた知見を報告しました。以下発表サマリーをご紹介します。

 [サマリー]
 大学授業を対象にした研究方法論は、一般的に難しい。いくつかの研究方法をレビューしたが、 本研究では、実践的かつ実証的な研究方法として、Design Based Research(以下、DBR、2003年)を取り上げ、 初年次教育を対象にして、DBRを適用して、得られた知見について報告する。 但し、そのままDBRの方法を適用することは困難であることがわかったので、筆者が大学授業改善用に修正した方法 (以下、DBR修正版)を用いて、分析および授業デザインし、評価した。

 初年次教育として、筆者は、現在フレッシュマンセミナーと呼ばれる科目を担当しているが、その内容は、 学年で共通した内容に、各教員が創意によって開発した内容で、構成されている。

 概略的には、大学生活に慣れる意味でのオリエンテーション、自己紹介、施設見学などが、共通の内容であり、 筆者は、文章表現、新聞記事の内容理解、教育相談、教育基本用語、ノートの取り方、文章のまとめ方などを付加して、 授業を構成している。この内容は、教育学部の総合演習に類似した内容を含んでおり、相互に補完するように、実施している。

 DBRおよびDBR修正版では、評価をしながらデザインを繰り返すこと、これまでの研究知見で説明できること、 新しい方法が知見として創出できることなどが挙げられるが、 本研究では、DBR修正版を適用した結果で得られた知見について、報告する。

(CRET理事 赤堀 侃司)

2009年3月11日

ED-MEDIA2008発表報告
〜長文読解問題のCBTインターフェース研究開発報告〜

実験の様子

システム画面

ED-MEDIAでの発表

 基盤設計研究部門では次世代テスト基盤開発の一環として、新しいテストインターフェースの研究開発を行っています。 2008年は縦書きによる長文読解用のテストインターフェースを研究開発し、22名の大学生被験者を対象とした実証実験を行い、国際学会ED-MEDIAのShort Paper(New Development)で発表しました。

 このインターフェースではコンピュータ上で日本語の長文読解問題で見られる縦書きによる文章を表示する際に、全文の1画面表示や紙のテストと同じ文字数での表示だけでなく、新書本(41文字)、原稿用紙(20文字)、新聞(13文字)など、日頃読み慣れているメディアの縦の文字数に合わせて表示させることができます。この表示の切り替えを、マウスの操作によるズームやスクロールによって実現できるため、紙が持つ一覧性に近い受験環境を実現しました。

 本発表は日本語用の開発についてが中心であったにも関わらず、他言語にも共通する課題として、3名の英語圏の研究者からの質問や提案がありました。その内容は、比較実験について紙の方が実験場で得点が高かったことについての意見交換をはじめ、文字の大きさの拡大のアルゴリズムについて、またその実装方法についてであり、今後の研究に向けて役に立つ議論を行うことができました。  今後も引き続き、あらたな出題方法の提案、コンピュータ入力の自由記述への影響や、数学の途中式への対応などの研究を進め、自動採点技術と連携したテスト環境の実現をめざしていきます。

(CRET研究員 谷内 正裕)

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