CRETのコラム Colomn

CRETから、最新の教育・テストに関する世界の動向などをコラムとしてお届けします。

問題解決能力、金融リテラシー、TALISの結果と活用

教育テスト研究センター 理事長 新井健一



 PISA2012で実施した問題解決能力の結果が4月に公表された。掃除ロボットの動きのルールを理解する問題や、説明書のないエアコンの使い方をつきとめる問題など、解決方法が直ぐにはわからないような状況の問題が出題され、日本の成績はOECD平均500点に対して552点。トップのシンガポール562点、2位の韓国561点に次ぐ結果であった。見慣れない問題にも関わらずよい成績であったが、質問紙調査の結果が気になる。問題解決における忍耐力、柔軟性に関する質問の回答を指標化した結果、日本は参加44か国・地域中、最下位であった。おそらく、日本の子どもたちの自己評価基準が高いことによる結果であって、単純な解釈はできないと思うが、それにしても低い。もし本当に問題解決場面で忍耐力、柔軟性が低いとすれば、問題解決能力を期待できるだろうか。実際の観察と合わせて検証したいものである。


 PISA2012では、日本は不参加であったが、金融リテラシーの調査も行われた。商品の送り状や給与明細の読み取り、スーパーマーケットでの買い物に関する問題などが出題され、18か国・地域の子どもたちが取り組んだ。熟達したレベルは10人中1名程度で、数学的リテラシー、読解力との相関が高い。銀行口座を持っている子どもが70%以上の国もあれば、30%以下の国もあり、70%以上の子どもが銀行口座を持つ国の多くでは、銀行口座を持っている子どものほうが、スコアが高い傾向にあった。また金融リテラシーは、問題解決能力の忍耐力とも関係があるようだ。さて、日本の子どもたちはどうだろうか。これからの社会で、適切な経済活動をしていく準備はできているのだろうか。


 日本の教員の状況はどうか。6月に公表された、34か国・地域が参加した国際教員指導環境調査(TALIS)の結果をみると、校内研修等で学び合い、指導改善に努めているものの、生徒に自信を持たせる、動機づけを行う、学習の価値を見出す手助けを行うなどの働きかけには自信がないようだ。これは、PISAの質問紙による子どものたちの結果と相通ずる傾向だが、アンケート調査のため自己評価基準に左右される。指導や子どもの実態と合わせて見てみたい。


 このように国際比較調査からは多くの示唆を得られるが、国ごとに様々な背景があるため、単純に比較して解釈できないことも多い。したがって、改めて自ら調査して実際の観察などと合わせて解釈していければ、現実感のある調査になるのではないか。PISAやTALISの調査項目は、すべてではないが公開されている。それらを活用することで、結果を見るだけの国際比較調査から、身近に活用できる国際比較調査になるのではないだろうか。専門家たちの国際的な連携によって開発された調査項目を、見ているだけではもったいないと思う。(2014.7.29)

新井 健一 -Kenichi Arai-

教育テスト研究センター(CRET) 理事長 / ベネッセ教育総合研究所 理事長

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