CRETの関連書籍紹介 Book

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批判的思考力を育む--学士力と社会人基礎力の基盤形成

批判的思考力を育む--学士力と社会人基礎力の基盤形成

批判的思考力を育む--学士力と社会人基礎力の基盤形成

楠見 孝・子安 増生・道田 泰司(編)
有斐閣(2011年9月)
本体価格:3,255円

 

CRET協力研究員 伊藤 素江

 

  本書は、文部科学省科学研究費補助金基盤研究(B)18330138(代表:楠見孝)「批判的思考の認知的基盤と教育実践」の成果として出版されたもので、現在の批判的思考研究を牽引する認知心理学および教育心理学研究者らが編著者となり、さらに哲学や倫理学など関連する諸領域の研究者が執筆陣に招かれている。構成は「理論編」「育成編」のⅡ部構成(全10章)になっている。第Ⅰ部は「理論編」といっても、学問的系譜や定義にとどまらず、批判的思考が現代社会にどう位置付いているか、日常生活でどう発揮されるか/されないか、どう測定するかなど多様な角度から批判的思考に焦点を当てている。第Ⅱ部の「育成編」も、大学における育成に絞りつつ、教える側の心構えに始まり、執筆者ら自身による多様なシーンでの育成事例を紹介している。これらのことから、批判的思考を「論理的で内省的な思考も含む思考」(ⅱページ)と定義し定着させたいと述べる編者の意図どおり、読者は批判的思考のスキルや考え方を学びながら、本書をも「批判的に」読み進めることが可能となっている。

  テストに焦点を当ててみると、第6章が「批判的思考の測定―どのように測定し評価できるか」というタイトルのとおり、批判的思考の測定ツールやそれらの評価を行っている。批判的思考の測定ツールの開発はアメリカで盛んだということだが、その背景として高等教育の普及が指摘される。アメリカの高等教育進学率は1970年代に一時停滞したものの1980年代中頃から再び上昇し*1 、高等教育のユニバーサル化(進学率50%超)を迎えている。少数のエリートだけを教育していた頃とは違い、高等教育進学が一般的になるにつれ社会がその教育効果=大学教育の質保証を問うようになったのである(第2章)。これを受けて様々な機関が開発し標準化されたテストが、第6章でサンプル問題付きで紹介されている。
   第6章では単に既存のテストの紹介だけでなく、批判的思考が「認知的側面」や「情意的側面」といった様々な側面を持つことをふまえ(第1章)、「批判的思考のどのような面を測定したいのかによって、用いるべきテストも異なってくる」(116ページ)として諸概念ごとに既存のテスト・測定課題を分類している。日本は、教育実践の事前事後で批判的思考力の変化を測定できる標準化されたツールがなく、さまざまな研究者が個別のテストを研究・開発しているのが現状とのことであるが、この分類はそれら批判的思考研究が研究そのものを批判的に捉えるツールとなるものだと言える。

   このように、本書は批判的思考の研究者はもちろん、その教育を受ける人、テスト開発者といったあらゆる諸関係者が「論理的で内省的」に考えるヒントに溢れている。また、批判的思考が領域横断的な性格を持つために、それは諸関係者だけでなく「より良く生きるという個人の生涯にわたる発達」と「個々人が幸せな社会の形成」(終章)に資する1冊となっている。

*1 金子元久(2010)「ユニバーサル化の亀裂」『IDE現代の高等教育』No.518, pp4-9

その他研究員 -Other Researcher-

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その他研究員

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